ニッポンのインフラ力

国内は効率性、海外は運営力が課題に

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協力:明電舎

 道路や上下水道、交通機関といった社会インフラ市場が転機を迎えている。国内では高度成長期に建設が集中したインフラの老朽化が加速。地方の疲弊や人手不足が進む中、ICT(情報通信技術)などを使い、いかに効率性を高められるかが問われる。一方、国内市場の縮小をにらんだ海外進出も盛んだが、欧米勢や中国勢などとの競争は激しい。ニッポンのインフラ力を強くするには何が必要かをシリーズで考える。1回目は総論として、現状と課題を展望する。

維持・管理だけで総投資額を超える

 国土交通省によると、日本のインフラストックは金額に換算して約786兆円ある。年度別にみると、1960年代以降、高度成長に合わせて総投資額は増え続けてきたが、2000年ごろの18兆円をピークに減少に転じた。新設費が大きく減ったのが理由だ。

 代わって伸びているのが更新費と維持管理費。その要因は急速に進むインフラ老朽化にある。道路橋、トンネル、河川管理施設など主なインフラでみると、建設後50年超となる割合は、2013年3月時点ではおおむね3割以下だったが、2033年3月には5割以上に増える。この結果、今のペースで進むと、2037年には更新費と維持管理費だけで8兆円と、2010年の総投資額(新設費を含む)を上回り、さらに増え続ける計算になるという。

 膨らみ続ける維持・更新費用をどうまかなうか。大きく分けて3つの対策が進みつつある。1つは選択と集中だ。国土交通省は第4次社会資本整備重点計画(2015~2020年)の基本方針として、「社会資本のストック効果の最大化を目指した戦略的インフラマネジメント」を掲げる。具体的には、(1)集約・再編を含めた既存施設の戦略的メンテナンス、(2)既存施設の有効活用、(3)社会資本の目的・役割に応じた選択と集中の徹底(優先度や時間軸を考慮)だ。

 では、延命すると決めたインフラをどう効率よく維持管理するか。それが2つ目の柱となるICTの活用だ。「建設業界でも、あらゆるモノがネットにつながるIoTやドローンの活用が進んでいる」。みずほ銀行産業調査部の藤井洋平参事役は指摘する。調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新の各プロセスでデータを収集し、生産性を向上させる。

 中でも「人手不足に対応するには、センサーやドローンを活用した予防的修繕のメリットが大きい」(藤井氏)。建設業界では技能労働者の減少と高齢化による生産性の低下が懸念されている。政府も「i-Construction(建設現場の生産性革命)」を掲げ、トップランナー施策を推進するなど、民間の創意工夫を促そうとしている。

 3つ目の柱が、民間の資金・技術・ノウハウの活用。具体的には、PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)やPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)の推進だ。中でも、ここへ来て注目されるのが「コンセッション」と呼ばれる方式。施設の所有権は国や自治体が持ちながら、運営権を民間企業など外部に売却する。すでに空港や道路で実例が出ているほか、上下水道やクルーズ船向け旅客ターミナル施設などでも検討が進められている。

 国内のインフラはこれまで主に日本人を対象としてきたが、人口減少に伴い、新設需要の減少は避けられない。これからは「交流人口のためのインフラが新たなテーマになるのでは」と藤井氏は提言する。インバウンド需要への対応だ。空港や港湾の整備のほか、街中でもバリアフリー化のニーズはまだまだ大きい。国際会議や展示場といったMICEにかかわる施設も有望だろう。限られた資産(ヒト・モノ・カネ)をうまく活用する知恵が、国内のインフラ整備には求められている。

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