ニッポンのインフラ力

自治体は真に必要なインフラ投資を 片山善博・早稲田大学 公共経営大学院教授に聞く

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協力:明電舎

 日本では今後、高度成長期に建設された道路や橋といった社会インフラの多くが更新期を迎える。一方、少子高齢化が急速に進む地方を中心に自治体財政は逼迫し、インフラ整備には地域活性化と共に効率性の観点が欠かせない。地域の活力を維持・拡大しつつ、持続可能なインフラ整備をどう進めればよいか。地方創生や自治体行政に詳しい片山善博・早稲田大学公共経営大学院教授に聞いた。

財政の仕組みそのものに問題

――国内の社会インフラは老朽化が進み、巨額の維持・更新費がこれから必要とされています。道路や上下水道は自治体が管理・運営するものが多いですが、インフラの整備は進んでいないのでしょうか。

 まず基本的な問題として、自治体はこれまで、地域にどのようなインフラが本当に必要なのか、突き詰めて考えてこなかったのではないか。住民が何を求めているのかという発想よりも、何を作れば国の補助を得られるのか、財政上有利かといった、損得勘定が優先されてきたことは否めない。だから、ムダな道路や建物がいっぱいできた一方で、必要な設備が足りない、更新できていないといったことが各地で起きている。

 都市部で言えば、いわゆる「開かずの踏切」問題。また、地方都市も含め、通学路の車道と歩道の分離も進んでいない。これまで景気対策と称して多くの資金が自治体に流れているのに、なぜ進まないか。いずれも工事の際に近隣住民の立ち退きを要するなど手間がかかるからだ。景気対策は迅速な執行が求められる。その結果、人がほとんど通らない場所に道路ができてしまう。

 維持・修繕よりも新設を優先しがちな自治体の体質も問題だ。企業であれば、工場や店舗を作れば減価償却費を毎年計上し、維持・修繕費や建て替え費用に充てるが、自治体にはそうした発想が乏しいところが多い。資金がないから、切羽詰まらない限りは修繕を先送りしてしまう。実は道路の維持補修費などは、国からの地方交付税交付金の内訳に計上されている。しかし、交付金は自治体が自由に使えるため、つい他の用途に使ってしまいやすい。こうした悪しき習慣から改めていく必要がある。

――具体的には、どう変えていけばよいでしょう。

 自治体が本当に必要なインフラを自ら選ぶまっとうな考え方を持つようにしなければいけない。そのためには、国の財政の仕組みから変更し、自治体を誘導していくべきだろう。1つは補助金を伴う予算の年度内消化や早期着工といった慣習をやめ、自治体が柔軟に予算を執行できるようにすること。そうしないと、中長期的な課題がいつまでたっても解決しない。

 もう1つは省庁の縦割り意識をなくすこと。例えば、同じ道路でも、農林水産省が所管する農道への交付金は潤沢なのに、国土交通省が所管する県道への資金は足りないといったことがよくある。同じ国民の税金なのに、役所の縄張り争いで過不足が生じるのはおかしい。

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