天下人たちのマネジメント術

「75歳定年時代」に備える3つの急所 岸博幸・慶応大学大学院教授に聞く(下)

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自らの生産性を高めスキルアップを

 「第3の理由は、2025年には団塊の世代が全員後期高齢者となることを考えると、財政と社会保障の持続性を維持するには社会保障制度の抜本改革が不可欠であり、社会保障の水準が引き下げられる可能性が高いことです。老後の生活費はざっくり計算して夫婦で毎月20万~30万円、シングルで15万~20万円でしょう。年金支給額が減額され、支給開始年齢も将来は70歳に引き上げられる可能性が高いと考えています。70歳まで働くのは当たり前で老後の蓄えが足りない人は70~80歳まで働くことを視野に入れておくべきです」

 「長生きの時代は長く働く時代でもあるわけです。歴史的に1880年代の米国では80歳以上の半数、54~84歳の約8割が何らかの形で雇用されていたというデータもあります。60代でリタイアという生き方は工業化と大量生産の時代に確立したにすぎません」

 ーー“セカンドライフ”に備えての社員向け講習を開く企業もありますが、まだピンと来ない人も少なくありません。

 「高齢者になった時に自分の身を自分で守るには、自分の生産性を高めておくことに尽きます。75歳定年時代に備える第1の心得は、自分のスキルアップの意識を強く持ち、株など金融資産の投資と同じくリスクを取ってリターンを得る自分への投資という認識を持つことです。客観的に見て日本人は色々なことができるのに、欧米人に比べ圧倒的に将来のキャリアプランへの関心が薄い。多くの米国人が奨学金で多額の借金を背負っても大学院などに通っています。将来の自分のキャリアと収入のアップを目指しているのです」

 「高度成長期は、仕事に必要なスキルは企業が与えてくれるものでした。でも終身雇用が崩壊しつつあり、かつ将来的には75歳まで働くのが当たり前になるであろうことを考えると、自分のスキルアップを企業に頼るのはもう無理です。また、国や自治体が提供する職業訓練はその多くが初歩的なスキルを教えるだけですので、これでは不十分です。制度が実態に追いついていないからこそ、自分で考えてスキルアップに取り組むことが必要なのです。元衆院議員の杉村太蔵くんはうちの大学院の博士課程に入って政策の研究を行なっています。将来の転身に備えて、かなり高い授業料を払う、つまり自分に投資しているのです」

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