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西郷、ナポレオン...読みたい歴史書10冊

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近代史研究の大家による歴史小説ガイド

(9)「孫文とアジア太平洋~ネイションを超えて」(汲古書院、8500円)

 中国人観光客らによるインバウンド需要が急速に高まる一方、上野動物園の「シャンシャン」に全国からの関心が集まっている。しかしこうした日中雪解けムードはいつまで続くのか。「中国革命の父」と呼ばれる孫文への関心が静かに高まっている。本書は昨年の生誕150年記念シンポジウムを日本孫文研究会がまとめたもの。日中を中心にヨーロッパ、アジアの研究者の論文集だから読みやすくはない。ただ孫文とインド独立の父・ガンディーとの比較や、孫文とオーストラリア華僑との交流など興味深いテーマが並んでいる。

重要なキーワードは孫文の「大アジア主義」だろう。1924年、神戸での講演で孫文は、日本に対し「欧米の覇道文化」と「アジアの王道文化」を対比させ日本に選択を迫った。西洋の帝国主義は覇道として非難し、中国固有の王道文化の伝統が未来社会への価値ある道標として示したという。ただ「大アジア主義」という言葉は、東アジアの政治的激動の下でさまざまに利用され満州国でも使われた。村田雄二郎・東大教授は王道のあり方は自明なのか、王道文化に綻びはないのか、王覇の別を決定するのは誰なのかと問いかけ、大アジア主義を「孫文が21世紀の我々に残してくれた新たな謎かけである」と締めくくっている。

(10)「歴史小説の懐」(講談社+α文庫、1500円)

 楽しく読みながらウンチクを仕入れられるのが歴史小説の良いところだが、それを日本史研究の大家がガイドしてくれれば言うことなしだ。本書の著者は天下人の視座でも江戸庶民の視点でも歴史が見られる近世史の山室恭子・東工大工学院教授。「竜馬がゆく」「真田太平記」「宮本武蔵」など絶対的な定番ばかりでなく山岸凉子氏のマンガ「日出処の天子」も取り上げている。

「新しい書き手が次々と育っていますが、吉川英治・司馬遼太郎など、それぞれの時代を牽引した古典を読み返すことで、新鮮な発見も多々あろうかと思います」とは著者からのコメントだ。実は2000年に1度出版した事実上の復刻本なのである。今活躍中の安部龍太郎、伊東潤、冲方丁らから「ゴールデンカムイ」までを解説した続編が出ないものだろうか。この著者が現在の歴史小説をどう読み込んでいるのか、想像するだけでも心躍るものがある。

(松本治人)

キーワード:経営、管理職、企画、人事、人材、経営層

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