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西郷、ナポレオン...読みたい歴史書10冊

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歴史をつくった人々の生の感情に触れる

(7)「日記で読む近現代日本政治史」(ミネルヴァ書房、3800円)

 「西郷どん」以降の近現代史をしっかり把握しておきたいのならばこの一冊だ。維新の元勲である木戸考允、大久保利通から戦後の石橋湛山、佐藤栄作らに至るまでの一級の政治家たちの日記の読みどころを解説し、その時代背景を解き明かしている。編者は黒沢文貴・東京女子大教授と季武嘉也・創価大教授。公文書などと違い、日記には歴史をつくってきた人々の生の声、他人には見せることのない本音や喜怒哀楽が包み隠さず記されており、その時代の人間が演じる歴史ドラマを実感することができる。

 筆者のひとり、西川誠・川村学園女子大教授は木戸日記には述懐や憂慮など人間的なウエットさが見られるのに対し、大久保はきわめて事務的記録的だとして「全く対照的」としている。こうした違いは説明型リーダーと決断型リーダーの違いでもあった。河野康子・法政大名誉教授は内閣最長記録を持つ佐藤栄作日記を読み解く上で、名首相秘書官と言われた楠田実氏の日記のほか、2人の政治学者、高坂正堯・永井陽之助両氏の理論を補助線として用いている。特に永井氏は佐藤首相とは個人的交際はなかった。それでも同氏の自主核武装論批判を取り込むかのように、佐藤はラスク米国務長官に「日本にドゴール(自主核武装に踏み切った仏大統領)はいない」と言明した。政治のダイナミズムが日記の行間からうかがえるエピソードだ。

(8)「アメリカ 暴力の世紀」(岩波書店、1800円)

 現代史の1冊を選ぶなら本書だろう。古典的名作「吉田茂とその時代」、大作の「敗北を抱きしめて」の著者であるジョン・ダワー氏の最新作だ。米国における日本近現代史の大家だが、今回は第2次世界大戦以降の自国史に目を向けた。戦後、これまで70年以上にわたる「パックス・アメリカーナ」は、世界各地での平和の破壊の連続でもあったとしている。唯一の超大国であるアメリカが「巨大な軍事力を持つ一方、深刻な被害妄想や失敗感にとらわれている」との見立てだ。硬質な和訳が内容にマッチしている。全く訳書は訳者次第だ。

 本書は大統領選挙前の2016年9月に本国で発行された。「日本語版への序文」は当選後のトランプ大統領について記されている。多くのアメリカ人と世界の大部分がドナルド・トランプを不安の目で見ているという。その中で最も重要なのは「トランプ大統領が世界のリーダーとして、『支配』以外に、アメリカの将来について展望を持っていない」点だと指摘している。さらに踏み込んで「トランプの不寛容性と『アメリカ・ファースト』の愛国主義は、国際主義の拒否と民族間・宗教間の憎悪、愛国主義的な憎悪と完全にマッチしている」「トランプの極端な言語表現と行動を好む性癖は、もともとアメリカ気質なのである」と強調している。

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