天下人たちのマネジメント術

人口減対策の切り札はシュタットベルケ 諸富徹・京大大学院教授に聞く

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 --自治体の間ではドイツの「シュタッケトベルケ(都市公団)」のシステムが注目されています。現地ではどのように機能していますか。

電力事業・高齢者見守り組み合わせる

 「歴史的には19世紀半ばから始まりました。第2次産業革命の展開に伴って、上下水道など都市インフラを手掛ける企業体として成立しました。21世紀の現在も再生可能エネルギー事業を中心に、公共サービス企業として水道、公共交通、廃棄物処理、公共インフラの維持管理、インターネット整備などを対象に経営しています。公共プールも担当範囲です。全ドイツで約900企業が展開しています」

 「特徴としては(1)自治体が100%出資しているものの完全な独立採算制で補助金などでの補填がないこと(2)太陽光発電など専門のエキスパートを確保していること(3)電力小売りで黒字を維持し他の赤字の公共サービスへ当てていること--ですね」

 「シュタットベルケは地域の経済循環を生み出す役割も果たします。経済学の視点からは電気・ガス料金は結局地域から小都市でも数十億円もの所得を域外に支払っていることになります。最終的には中東地域などへ流出している形です。ドイツのシュタットベルケはこうした所得の域外流出をとめて、エリア内の実質所得を引き上げる試みです」

 --電力部門の黒字を赤字部門に当てて全体で経営のバランスを取っているのは参考になりますね。しかし公的な企業であるのは価格競争で民間に遅れを取りませんか。

 「実際に1990年代半ばに欧州連合(EU)が誕生しエネルギーが自由化された時にはシュタッケトベルケの多くが退場すると予想されていました。しかし個々の顧客に対するサービスを充実させました。契約後も色々な問い合わせや要望にきめ細かく対応することでお客をつなぎ止めたのです。公共料金を一元徴収する利便性も前面に出したりしました。価格競争でない分野で強みを発揮して生き残ったのです」

 --日本におけるシュタッケトベルケ展開はどういう状況ですか。

 「日本でも第2次世界大戦前はドイツに学んで『電灯事業』を市営で展開していました。国内では約3カ所の自治体で地域新電力という形で、試みが始まっています。ドイツとの違いは地元の自治体企業が出資していることです。先駆的に福岡県みやま市では自治体の出資比率が55%、浜松市では12.5%にとどまっています」

 「みやま市のケースでは、遊休地だった市有地に太陽光発電所を建設し、パナソニックのエキスパートをトップに迎えました。同市は福岡県南西部の人口4万人の地方都市です。有明海に面して平地が多く太陽の日差しに恵まれています。電力会社への域内年間約20億円でした。ポイントは電力小売りだけでなく、高齢者見守りサービスと組み合わせたことです」

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