新興国がグローバル市場の成長をけん引する中、何をもって進出を決断すべきか、また現地に拠点をつくったものの、どんな活動から始めるべきか。新興国市場を自社の成長源として取り込むには、これまで手掛けてきた「海外事業」とは異なるアプローチが求められる。
日経BizGate「沸騰!新興国マーケット」連動セミナー「企業価値創造に向けたインド市場戦略」では、巨大な潜在力を秘める半面、「複雑」「つかみどころがない」といった声も聞かれるインド市場について、新興国対応力を養う「道場」と位置づけ、日本企業に求められる視点と、価値を生み出す手法を探った。

講演1
新興国対応力を養う「道場」としてのインド

Photo:西本 逸郎氏 株式会社シグマクシス
プリンシパル
大和 倫之 氏

 急速な経済成長を背景に、グローバルな影響力を強める新興国の動向についてはよく知られるところだ。なかでもBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)は新興国群のリーダーとして格別の存在感を持っている。そのBRICsの中でも、ブラジル、中国、ロシアの情報は毎日のようにメディアに取り上げられているが、インドについての情報はさほど多くない。インドネシアやタイなどのASEAN(東南アジア諸国連合)諸国の方が、物理的・文化的距離が近いということも一因だろう。

 しかし、約330万平方キロメートルという広大な国土の中に、12億の人口を抱え、BRICsの中では中国に次ぐ水準で高成長を続けている巨大な市場がインドである。この市場に意義を見出して、すでに1000社を超える日系企業も市場参入している。

 「ひとつの新興国市場として取り組む以上の意義がインド市場にはあります」とシグマクシス プリンシパル 大和 倫之氏は、市場参入だけの視点ではなく、多角的に捉えることの必要性を強調した。巨大な潜在力を秘めたインド市場を獲り込むことだけでなく、インド市場での経験を新興国への対応力の強化につなげるという考え方が必要だという。

 そうしたインドに対し、日系企業はどのようにアプローチしたらいいのだろうか。

世界標準で発展するインドで自ら市場を切り開け

 日系企業のインド進出を長年にわたり支援してきた大和氏は、「これまでの海外事業の延長線上ではなく、あくまでも新規事業として取り組む必要があります」と指摘した。これまで日系企業が海外進出に際して採ってきた、品質に対する理解を前提にした差別化戦略や安価な労働力を背景にした生産拠点の拡大といったアプローチは、インド市場では通用しない。新しく事業を興し、地盤を築いて、その市場を取り込んでいくという新規事業開発に近いアプローチが必要なのだという。

 もう1つのアプローチは、インド市場の現状を「世界標準で発展するローカル市場」と捉えることである。現在のインドは、未成熟ながらも、欧州・中国の成長モデルの知見を生かしながら急成長している市場でもある。大和氏は、2011年に実施された小売業の規制緩和に際して、英米の有力総合小売業各社が極めて戦略的にインド市場への展開を模索している事例を紹介し、減価償却が終わった機械を輸出するようなビジネススキームでは成功しないと断言した。

 また大和氏は、インド市場の開拓に成功した場合、「インドの西側に広がるMENA(Middle East, North Africa)という市場までを見据えた事業展開が可能になってきます」とインド市場開拓のもう1つの魅力を紹介。インド進出を新規事業として捉え、ASEAN・中東・アフリカ・CIS(ロシア・独立国家共同体)などへの対応力を養う「道場」と捉えてはどうかと提案した。

早く、小さく、売り上げ確保

 インド市場に進出する場合、企業は何から始めるのがいいのか。大和氏は「事業環境の整備も含めて、自ら市場をつくるアプローチ」と「早く、小さく、売り上げを生むアプローチ」が必要だと説き、その手法を紹介した。

 最初に必要なステップが「社内“資産”の棚卸し」だ。日本企業がその性能や付加価値を信じて疑わない製品や技術が、必ずしもインド市場の関心度合いや優先順位に合うとは限らない。それがインドという市場である。そうした市場を切り開くためには、「製品や技術をそのまま市場に展開するのではなく、これまでに培った技術やビジネススキームなどの“資産”を見直してみることが必要です。その上で、どの“資産”をどのように組み合わせて事業化するかを検討することが鍵になります」と大和氏。事業環境の整備も含めて、自ら市場をつくるアプローチの重要性を説いた。

 次に必要なのが、段階的な目標設定である。例えば、製品の浸透と工法の土着化、周辺製品展開と事業の多角化、さらに中東アフリカなどインド以西への展開などの具体的な活動目標を設定し、どのようなタイミングでどう実現するかをスケジュール化することが欠かせないという。「大型投資への精緻なフィージビリティースタディーを経てからではなく、とにかく早く、まずは動いてみる」ことの重要性を重ねて強調した。

大和 倫之氏の講演資料はこちらからダウンロードできます。

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