社長、その商品名、危なすぎます!

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吉本興業の「面白い恋人」はなぜ問題になったのか

弁理士 富沢正 氏

 先に登録された商標との類似性などについては、特許庁が判断する場合、また争いになって裁判所が判断する場合とでは少し基準が違ってきたりします。具体的には、特許庁は商標が「登録できるか」を問題としますが、裁判所は商標の権利範囲に入って「商標権の侵害となるか」を問題とするからです。つまり、裁判所のほうがより具体的にどんな状況かなどの事実を考慮するのです。

 商標の中でも、特に図形として表わされるものは、その見え方が似ているかどうかが問題となります。

 先に紹介したアディダスといえば3本ラインです。では、3本ラインのアディダスの靴と4本ラインの靴では商標は間違えるほど似ているでしょうか。

 小学生のころは有名ブランドに似た運動靴を履いていくと同級生にからかわれたものです。子どもはブランドに敏感で、3本と4本のラインの違いは簡単に見抜き、アディダスの商品ではないと気がつくでしょう。これは子どもに限った話ではありません。

 しかし、靴の絵を描き、4本のラインを引いてみます。すると、ラインを引いた間には3本ラインができるのです。

 実際に、通販大手のニッセンという会社が4本のラインを商標登録したところ、アディダスが「似ているのではないか」と抗議し、これが裁判にまで発展、2012年に知財高裁で「混同の恐れがある」とされ、特許庁の審決(登録できる)が無効になった事案がありました。

 この知財高裁の判断としては、4本のラインの間を見ると、そのラインの具合によって3本のラインに見える、という考えが説明されました。

 裁判の前に特許庁は、アディダスの審判請求に対し、十分に判別できるので混同の恐れはないと判断していましたから、これも裁判所と特許庁とで商標の類似性について判断が分かれた典型的な例となります。

富澤 正 著 『社長、その商品名、危なすぎます!』(日本経済新聞出版社、2015年)の「面白い恋人はなぜ問題になったのか」から

富澤 正(とみざわ ただし)

弁理士、コスモス特許事務所パートナー。1980年、愛知県生まれ。愛知大学卒業、名古屋工業大学大学院修了。LECで弁理士受験の講師を務める。オモシロ特許研究会を主宰し、知的財産権の大切さを伝えるため全国で講演を行う。自身、商標権を生かしたアイデア商品を作るベンチャー企業、Time Factory株式会社を設立、資格試験の受験生向け商品などを手がける。著書に『弁理士受験 法程式シリーズ 理系のための商標法』などがある。

社長、その商品名、危なすぎます!

著者:富澤 正
出版:日本経済新聞出版社
価格:918円(税込)

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