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第16回「都市に埋もれる1500万世帯分の熱源を有効活用へ ~下水熱利用に向けた先進的な取り組みが始動」

 エネルギーの有効活用が時代の趨勢となる中、「いままで廃棄していたものに目を向け、新たなエネルギー源として利用しよう」という動きが活発化している。とりわけ今注目株とされているのが下水熱の活用だ。これまで捨てるだけだと考えられていた下水の熱エネルギーを冷暖房や給湯、融雪などに利用する取り組みである。今回はこの下水熱利用にスポットを当て、企業や自治体の取り組みを概観していく。

既存インフラの有効利用が可能な下水熱エネルギー

 都市の未利用エネルギーには、下水熱、清掃工場や発電所からの排熱、地下鉄の排気などがある。なかでも下水熱は、都内の未利用エネルギーの約4割を占め、最大のポテンシャルを持つ。国土交通省の発表によれば、国内で利用できる下水熱エネルギーの量は、7800Gcal/hと概算されている。これは何と1500万に及ぶ世帯の年間冷暖房熱源に匹敵する。これまでほとんど利用されずに廃棄されていたのは、もったいない限りだ。

 地中に埋設された管路を通る下水は太陽などの影響を受けにくく、年間を通じて温度が安定している。そこで、外気との温度差を利用してヒートポンプを活用することで、冬期には下水熱をくみ上げ暖房や給湯に利用、夏期には逆に下水に放熱して冷房等に利用することが可能になる。すでに日本では全国的に下水道の普及が進んでおり、既設の施設や設備などをそのまま活用することができるという点でも、下水熱利用のメリットは大きい。

年間を通じた外気温度と下水温度の比較

外気温度と下水温度の比較
夏季と冬季には温度差が大きくなる。この温度差を利用してエネルギーを得るのが下水熱利用の概念だ。
(出所)国土交通省作成資料「下水道資源の有効利用に向けて」


下水熱利用システムの一例

下水熱利用システムの一例
下水熱利用には、上図のシステムだけでなく、下水処理施設を中心に周辺地域でのエネルギー利用を図るシステムもある。
(出所)国土交通省作成資料「下水道資源の有効利用に向けて」

「下水熱ポテンシャルマップ」を策定し事業可能性を探る

 国も本格的な取り組みを開始している。国土交通省は、再生可能エネルギーに対して実施してきたのと同様の支援や助成を処方すれば、大きなビジネスポテンシャルが開花すると判断。2012年8月24日、「下水熱利用推進協議会」を設置した。

 一方、下水熱利用の検討をする際には、事業案件ごとに計画の早い段階から詳細な調査が必要となる。ここに関わる相応の費用と時間は、民間事業者が事業化を図る際の圧迫要因となりかねない。そこで同協議会は環境省と連携して2013年度に 「下水熱等未利用熱ポテンシャルマップ策定事業」 を実施。各地方自治体を支援し、下水熱の賦存量や存在位置を可視化して、容易に把握することができる「ポテンシャルマップ」の作成と、その導入・普及を推進してきた。

 さらに2014年度には、ここで作成された「広域ポテンシャルマップ」をドリルダウン。実査の導入を検討するための基盤資料として、経済性や環境への影響はもとより、具体的な流量や水温の実測値などを含む「詳細ポテンシャルマップ」の作成を進め、各自治体の応募に基づいて「下水熱ポテンシャルマップ」を試行的に策定するモデル地区を全国から選定した。ここで選定されたエリアのうち、新浦安駅周辺(千葉県浦安市)については、計画推進事例として後ほど詳しく紹介する。

>> 大気汚染対策の一環として80年代から下水熱利用を行っていた東京都

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