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環境未来都市具体化へ 住民参加型の推進体制構築を

松下明男氏

2011年12月に環境未来都市として11の都市・地域が選ばれてから2年近くが経過した。政府としてこの間の進捗状況をどう評価し、これからどのように取り組みを進めていくのか。内閣官房 地域活性化統合事務局次長の松下明男氏に聞いた。

内閣官房
地域活性化統合事務局次長
松下 明男 氏

都市によって進捗状況にばらつきも

――今年3月に「環境モデル都市」が「環境未来都市」構想に統合されました。

 「環境モデル都市」は地球温暖化問題を背景に、低炭素社会実現に向けた都市の取り組みを促すため、2008年度に始まった認定制度です。その後、経済社会情勢の変化を踏まえて、2010年6月に、環境、超高齢化、地域独自の課題等の問題を克服することを目的とする「環境未来都市」が国家戦略プロジェクトの1つに組み込まれたわけですが、両者は環境という点において共通の目標を持っていました。

 そこで「環境未来都市」構想という1つの枠組みの中で、まずは温暖化ガス排出の大幅な削減などに自主的に取り組む「環境モデル都市」を認定し、さらにその中から、実績を踏まえて環境未来都市を選定していく、という形に整理しました。環境未来都市は環境対策をベースに、超高齢化などさまざまな課題を統合的に克服していこうという先進事例づくりであり、「低炭素都市をさらに進化させた姿」という位置づけを明確にできたと思います。今年6月に閣議決定された「日本再興戦略」でも、「環境未来都市」構想の推進が明記されています。

――現在までの進捗状況をどう見ていますか。

 計画の実現に向け本格的に動き出したのが2012年度からで、ようやく1年間のフォローアップを終えた段階ですが、現時点でいうと東日本大震災で被災した6地域と、それ以外の5地域の間で若干、進捗にばらつきがでているように思います。被災地の場合、復旧・復興と、環境未来都市というまちづくりに並行して取り組むことになりますが、復旧・復興が難航すると、その分計画も滞りがちになる面は否めません。

 一方、北九州市や横浜市は、そもそも1960年代にかけての公害対策から始まり、延々と積み上げてきた実績が土台にあります。エネルギー管理システムの導入など先進的な実証実験でも着実に成果を上げ、海外展開も視野に入りつつあります。

――例えばどのような事業や取り組みに注目していますか。

 北九州市の東田地区で約230世帯を対象に行われた電力のダイナミックプライシング(需給に応じて電力料金を変動させる手法)の実証実験や、横浜市の約1900世帯を対象にしたデマンドレスポンス(電力需給の逼迫が予想される場合に、電力使用抑制の協力依頼を受けて需要家側で電力の需要を調整する仕組み)を柱とした一般家庭の省エネ行動実験などは、新たな技術の実装に向けた、世界でも非常に先進的な事例だと思います。

 環境対策というと「省エネ・節電」のイメージが強いかもしれませんが、北海道・下川町のような森林資源を生かしたまちづくりにも、興味深いものがあります。バイオマスの活用は経済的に採算をとるのが難しいという話をよく聞きますが、事業として持続可能なモデルをつくり上げることができれば、森林が多い日本にとって大きな強みになりますし、海外にも普及展開していけるのではないかという期待もあります。

――環境未来都市構想は、被災地の復興にどのような役割を果たせますか。

 先にお話ししたように、当面の復旧・復興に手一杯で苦戦を強いられているところもありますが、その中でも、災害廃棄物を活用した宮城県岩沼市の千年希望の丘、福島県南相馬市におけるソーラー発電を活用したアグリパーク、岩手県釜石市におけるICTを活用したエネルギーの集中管理や在宅医療連携の推進など、形になりつつある事業も徐々にでてきています。

 まちづくりは複合的な取り組みで、とりわけ被災地の場合、時間はかかると思いますが、単なる復旧ではなく、「地元住民の方々が夢を持てる、新しいまちづくり」という目標が支えなり励みになって、そうした取り組みが加速していくことを期待しています。

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