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第9回「気仙沼市が挑む“未来志向の創造的復興”(後編)~地域循環型エネルギーで山も海も豊かに」

 前回紹介した「赤岩港 エコ水産加工団地」と並び、気仙沼で現在進行中のもう1つのプロジェクトが、「木質バイオマスエネルギー事業」だ。こちらは水産業中心の気仙沼において、地域の間伐材を活用した木質バイオマス発電を軸にしたさまざまな取り組みによって、地域の復興を促そうという試みだ。

豊かな山と海を取り戻せ

 「気仙沼地域における木質バイオマスエネルギー事業」では、2014年3月末、市内沿岸部に木質バイオマスによる発電施設「気仙沼BPP(バイオマスパワープラント)」が竣工し、4月から試運転が始まる。木質バイオマスは、まきやチップなど、木材に由来する再生可能な資源で、気仙沼BPPでは間伐材などのチップをガス化して発電する計画。発電能力は800kWで、年間を通して稼働すれば、一般家庭およそ1760世帯分に相当する電力を供給することができる。

高橋正樹氏
完成間近のプラントの前に立つ気仙沼地域エネルギー開発 社長の高橋正樹氏

 だが、このプロジェクトの目的は「新たな再生可能エネルギーの確保」だけではない。地元の石油関連会社「気仙沼商会」の社長で、このプロジェクトの事業主体である気仙沼地域エネルギー開発の社長も務める高橋正樹氏は言う。

 「山が荒れると、海も豊かじゃなくなる。間伐して残った木が立派に育てば、林業も盛んになる。山の人たちも豊かになり、被災した海も豊かになるという図式が描ける。そのためにはどういう仕組みが必要か、考えました」


震災直後の混乱の中、燃料調達に奔走

 気仙沼市で大正時代から続く気仙沼商会は、石油製品の販売や高圧ガスの製造販売などを手がけている。2011年3月11日の東日本大震災の際、市内に15カ所あったガソリンスタンドのうちの13カ所を津波に襲われた。それでも、比較的被害の小さかった2カ所のスタンドを急ピッチで復旧し、震災翌日から、ガソリンの供給を開始した。

 「非常用のハンドルを手動で回して、ポンプで吸い上げました。1リットル吸い上げるのに20回転、10リットルだと200回転。2、3台で腕が痛くなるので、社員が交代しながらやりました」(高橋氏)。

 初めはガソリンで暖をとる人たちへ、その後は、消防車など県外から続々とやって来る緊急車両への給油に追われた。貯蔵タンクを津波で流されるなど大きな被害を受けながら、燃料調達に奔走した気仙沼商会と高橋氏の活躍は、当時のニュースでも取り上げられた。

被災社屋と残されたタンク
津波に襲われた気仙沼商会のかつての本社(写真左)。震災前、同社の貯蔵タンクが多数あった場所には、現在は津波で流されなかった1基のみ残っている。

 そんな高橋氏が、気仙沼市民の代表で構成される「震災復興市民委員会」の座長になってほしいと市長から要請されたのは、震災から3カ月後の2011年6月だった。

>> 間伐を通じ、山の再生と燃料の調達を両立

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