【基調講演】伊勢 清貴 氏 水素社会実現にむけたトヨタの取り組み

2016年8月8日

トヨタ自動車
専務役員
伊勢 清貴 氏

 2014年に燃料電池自動車(FCV)MIRAIを発売した背景を説明したい。

 ガソリン自動車の普及に伴い、二酸化炭素(CO2)の排出量増加による地球温暖化など様々な課題が生じた。当社としては、当面は石油燃料車やハイブリッド車(HV)が主流と見ているが、電気や水素など燃料多様化に対応して全方位で技術開発を進めている。その中で社内の議論を重ね、「水素社会は必要」との結論に至りFCV導入に踏み切った。

 水素は使用過程でCO2を発生しない、再生可能エネルギーと相性が良い、といった特徴がある。さらに、石油など1次エネルギーの輸入抑制により海外への国費流出を低減できるほか、国内のFCV技術は世界トップクラスで産業振興にもつながるなど、メリットも大きい。このため当社は水素を将来の有力なエネルギーとして、FCVを究極のエコカーと位置づけて開発してきた。

 当社のFCV開発はプリウスより2年早い1992年から始めた。96年に初披露し、2002年にSUVタイプのFCVを投入、05年モデルで国内初の型式認証を得た。MIRAI発売まで、FCVの総走行距離は200万㌔を超える。

 当社はFCスタックや高圧水素タンクなど、主要FCシステムを自社で開発している。水素充電時間は3分程度で、1回の充電での走行距離は約650㌔㍍など、従来のガソリン車並みの使い勝手の良さを実現した。安全性についても水素タンクの各種実験を実施し基準を満たすなど、他のトヨタ車と同じ水準だ。

 20年ごろ以降は世界で年間3万台以上、国内で月間1000台レベルのFCV販売を目指しており、さらに次世代車の開発・普及に力を入れる。

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