【基調講演】橘川 武郎 氏 水素活用の意義と課題

2016年8月8日

東京理科大学大学院
イノベーション研究科教授
橘川 武郎 氏

 水素に注目が集まり始めたのは2014年からだ。エネルギー基本企画で役割を位置づけられたほか、国が戦略ロードマップを策定し、東京都や企業が具体的な取り組みを始めた。

 水素活用のメリットはまず、利用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない点だ。2つ目は燃料電池ではエネルギー効率が高く、省エネに貢献できる。3つ目は分散型電源として非常時に強い。4つ目は日本の技術を生かせる。5つ目は運搬や貯留ができ、エネルギーのあり方を変える可能性がある点だ。

 東京都は2年前の戦略会議で方針を打ち出し、日本をリードしている印象だ。ただ、特区制度を使うなどすれば、地方でこそ水素は力を発揮できるのではないか。

 政府が昨年定めた新エネルギーミックスでは、30年時点で水素は1次エネルギーで1%、電源構成で2%くらいの位置付けだ。これは非常に低い割合だと思うが、再生可能エネルギーと水素を結びつければ効果的に活用できる。具体的には、送電線が不十分な風力や太陽光発電の電気で水を分解し、水素にしてためたり運んだりすれば良い。

 さらに、水素を化石燃料と組み合わせる利用法も考えられる。火力発電で生じるCO2を貯留するCCSに着目している。海外の発電所でCCSを行い、そこで発生する水素を日本に運んできて使う、といったやり方がある。

 水素社会の実現には、①量産できずコストが高い、②安全性に対する不安など社会的受容性を高める、③燃料電池車と水素ステーションのサプライチェーンを一斉に立ち上げる必要がある、という3つの課題がある。将来性のあるエネルギーで、情報を全て公開するなどオープンにして育ててほしい。

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