パネルディスカッション 電力自由化とスマート社会の実現

2015年11月30日

<パネリスト>
小早川 智明 氏(東京電力 常務執行役 カスタマーサービス・カンパニー・プレジデント)
小川 要 氏(経済産業省 資源エネルギー庁 電力・ガス事業部 電力市場整備室長)
小嶋 祐輔 氏(Looop 事業本部企画開発部 部長)
野口 功一 氏(プライスウォーターハウスクーパース 電力・ガスシステム改革支援室 副室長)

<コーディネーター>
橘川 武郎 氏(東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授)


技術革新でエネルギー産業強く

橘川 まず、電力自由化によって何が変わるのか。メリットは何か。

小川 全体的な料金が下がるという期待がある。需要家の選択肢も広がる。新しいイノベーションが生まれ、日本のエネルギー産業が強くなることも期待している。

小嶋 消費者にとって選択肢が増えるが、単純な値下げ競争になってしまうと一時的なものになる。付随するサービスが充実し、新しい産業が生まれ、経済全体が活性化するのがメリットだろう。

小早川 競争による価格の低減には限界がある。経済全体という面で見れば、新しいサービスが増える。異業種の参入は歓迎だ。今後は電気とガスの良さをうまく組み合わせて商品を顧客に売り込むことが大事。このようなサービス合戦が目指すべきところだろう。

野口 通信の世界では携帯電話と固定電話、光通信を組み合わせた割引が今では当たり前だ。これと同じような動きがエネルギーの世界でも起きる。今後、通信やエネルギーをセットにした家庭インフラすべてのパイをどれだけ取っていくかという競争が激化するだろう。

橘川 メリットを享受していくにはどうすればいいのか。

小川 今回の自由化は需要に合った供給の選択肢を広げていくものだ。気がかりなのは需要側にその準備があるのかという点。エネルギー使用量が少ない家庭は料金を抑えていたが、一般の経済原則からは若干反する面もある。自由競争を持ち込んだ場合、何が起きるか。注視する必要がある。

小早川 エネルギーの使われ方自体が価値になるのではないか。削減できるものは、家庭レベルでも省エネサービスからのアプローチができる。

ウインウインの提携が大切

橘川 自由化では様々なタイプのアライアンス(提携)が始まっている。双方にとってウインウインのモデルにならなければいけない。この点を議論していきたい。

小早川 我々は異業種事業経験がなく、特に営業エリア外では営業力が皆無だ。短期的にはアライアンスで弱みを補完していきたい。中長期的にはお互いのシナジーで新しい価値や商品をつくっていく。

小嶋 新規参入者同士の提携が増えるだろう。小回りが利くので、地域ごとの「土着型」提携も考えられる。自社のリソースを活用できることがポイントだ。低圧分野に参入するならエンドユーザーが分かっていることが大切だ。

野口 アライアンスは攻めと守りだ。いま勝っているビジネスをなるべく守るためのアライアンスと、新しいビジネスでもう少し市場を広げていこうというアライアンスがある。さらにチャネルとしてのアライアンスもある。いかに顧客を持っているところと提携するか。チャネルと一緒にリフォームなどのコンテンツ込みで戦略的アライアンスを組むことが重要だ。

橘川 アライアンスがうまくいくと逆に自由化市場の下で支配力が高まるのではないかとの懸念もある。

小川 今回のシステム改革では市場の垣根を取り払うといっている。これまでとは違った形で市場と競争状況を見ていく必要がある。

小早川 競争が進展しない限り我々の立ち位置も変わらない。我々は競争を加速し顧客価値を高める姿に向かっていくだろう。

野口 顧客が非常に高度化している。選択肢が多いので、競争が起きないということもないのではないか。

ゲームチェンジ起こすルールを

橘川 自由化をいいものにしていくために必要な点は。

野口 エネルギーの自由化の中で大きなゲームチェンジのような動きが起き、サービスの世界が一気に広がる可能性がある。通信の世界でスマートフォンが登場したのもゲームチェンジが起きたからだ。ゲームチェンジャーが現れるようなルールがあれば、好ましい自由化社会ができていく。

小嶋 ルールはどんどん変わっていく。この中で経営に柔軟性を持たせられるかが課題だ。技術革新があれば、どういうサービスにつなげるか。スピードが重要になる。

小早川 自由化の裏側で生活弱者対策を考える必要がある。小売り事業者が担うのか、国、自治体が担い手になるのかを早めに決めなければならない。詐欺まがいの話を防ぐために適切な情報提供も必要だ。ガスの自由化と適切にリンクすることもカギになる。

小川 技術革新については柔軟な制度で支援する。また、生活弱者への配慮を含め、システム改革の影響についてはしっかり見ていく必要がある。いろいろな意味で試行錯誤だが、様々な関係者との対話が重要になってくる。

野口 我が国の自由化は世界中から注目されている。結果次第では世界のスタンダードが決まる可能性もある。自由化が遅れているようにいわれているが、日本が一番進んだ自由化社会になる可能性は非常に高い。

小嶋 ウインウインを実現するには新しいエネルギー構造やサービスを創出しなければならない。迅速に動ける新規参入者の特長を最大限生かしたい。

小川 選択肢が増えるということは、政治の世界でいえば選挙権、選択権があるということ。これをどのように行使するかがエネルギー市場をつくっていく。消費者一人ひとりが市場をつくっていくプレーヤーだ。大変革の時代を活用していただきたい。

小早川 自由化を通じて市民生活に密着する公益事業を進化させていく。省エネやスマート社会への転換を加速する一つの材料になればと考えている。

橘川 改革の流れを温かい目で見つつ、大きく変えていくことが重要だ。事業者の責任より需要家の責任が大きくなる時代がやってくるかもしれない。

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