パネルディスカッション SDGs実現を加速させるグリーンインフラ

2018年3月19日

<パネリスト>
宮下 正裕 氏(竹中工務店 取締役社長)=写真左上
福岡 孝則 氏
平松 宏城 氏(ヴォンエルフ 代表取締役/グリーンビルディングジャパン 共同代表理事)=写真右上
植松 浩二 氏(熊本市 副市長)=写真左下
コーディネーター 浅井 忠美 氏(日本政策投資銀行 地域企画部長)=写真右下

愛着生む地域づくりへ多様な手法をミックス

浅井(コーディネーター) グリーンインフラの取り組みやSDGsについて伺いたい。

福岡 グリーンインフラは、どのように地域や都市を変えていくのかという創造的な作業でもある。公園などの公共空間に、緑や水などの自然の力を組み込んで住みやすい街をつくるという視点で日本を見直してみると、非常に可能性が広がるのではないか。住民が参加して、長い時間をかけてグリーンインフラを育てていくことが、地域に愛着を生むことにつながる。その筋立てを考えることが重要だ。

平松 人中心の街に長期的な投資をするべきだという考えが現在主流になり、第三者認証による性能評価へのニーズが高まっている。最近では既存街区や都市レベルの持続可能性の評価をする「LEEDコミュニティー」と「LEEDシティー」の試行が始まった。これらはSDGsとの親和性が高く、アフォーダブル住宅やウォーカビリティー、教育、貧困、格差是正などが評価項目になっている。

植松 熊本市では2年前に発生した熊本地震の経験と教訓から、①地域力を生かした避難所運営②公園などの公共スペース③飲み水とトイレの必要性を痛感した。災害に強く持続可能な街をつくる上では、ハード整備はもとより、ソフト面である地域の助け合いといった包摂的な地域コミュニティーの維持・強化が重要になる。

浅井 グリーンインフラを進める上での課題や問題点は何か。

宮下 多機能で住民参加により長期的に価値を発現するグリーンインフラに比べ、グレーインフラは単機能を高度に発揮するが、維持・更新費が課題だ。カミソリ堤防だった隅田川が現在は緩傾斜堤として生活空間になったように、今後はグレーインフラのグリーンインフラ化を考えることも必要だ。

福岡 有事の防災力は大事だが、日常からコミュニティーの力を上げていくことをおろそかにしてはならない。グリーンインフラの形成や維持に住民が自ら関わることで、公共空間を自分事として考えることができる。シビックプライドの醸成にもつながるだろう。

平松 街区の都市計画・開発の環境性能を評価するLEED NDは、全体最適を関係者全員で探し、検証するツールでもある。官民が連携して地域まわりの課題について全体最適を求めて検証していけば、財源も生まれるはずだ。

植松 熊本のすぐれた水環境は、かつて加藤清正が実施した治水・利水工事が原点だ。今回の震災で過去から引き継いだグリーンインフラ的資産を守ることが大事だと改めて認識した。その上で街づくりや投資を考えていきたい。

浅井 これまでの歴史で日本人が培ってきた手法とグリーンインフラを融合させることが非常に大事だと感じる。多様な手法をミックスさせてバランスを図りつつ取り組むことが、様々な地域課題の解決につながるだろう。

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