パネルディスカッション 公有資産の利活用を契機とした地域活性化、新たなまちづくり

2018年3月19日

<パネリスト>
吉川 清志 氏(千葉県習志野市 政策経営部資産管理課 主幹)=写真左上
田中 慶彦 氏(アイ・ケイ・ケイ 執行役員 営業企画部長)=写真右上
佐竹 正範 氏(北海道美瑛町 政策調整課 課長補佐/ふるさと名品オブ・ザ・イヤー実行委員会 幹事長)=写真左下
馬場 正尊 氏(建築家、オープン・エー 代表取締役/公共R不動産 ディレクター)=写真右下

<コーディネーター>
足立 慎一郎 氏(日本政策投資銀行 地域企画部担当部長・PPP/PFI推進センター長)=写真


フラットな官民連携が資産利活用の第一歩

足立(コーディネーター) 各自治体では人口減少・財政制約の中で、老朽化する公有資産の再構築・持続的運営に向けていかに適切に対応するかという難題に直面している。おのおのの取り組みについて紹介いただきたい。

吉川 習志野市は築30年以上の公共施設が8割近くを占める、老朽化率が非常に高い自治体だ。10年前から老朽化対策に取り組み、「総量圧縮」「長寿命化」「財源確保」を3本柱とする公共施設再生計画を実施してきた。複合化や多機能化、官民連携を進める方針を打ち出し、再生整備に必要な事業費を30%圧縮する目標を掲げている。2015年度には内閣府の支援を受け、「公共施設再生地域プラットフォーム事業」を継続してきた。

田中 当社はレストランやカフェ、ウエディング事業が主体の企業だ。民間企業から見ると、公有資産には非常にポテンシャルの高い土地や建物が多数存在する。そこで小規模商圏で培った当社の経営ノウハウを生かし、成長余地のある地方都市を中心に出店。18施設のうち5施設が自治体と連携し、長期・安定的な店舗運営を行っている。富山市と連携して公園内に出店したレストランには年間約4万〜5万人が来店。公園の年間利用者が6年間で1.6倍になるなど、地域のにぎわいにも貢献している。

佐竹 私は一昨年にヤフーから美瑛町の政策調整課に出向し、地方創生に携わっている。美瑛町では公有資産の利活用の一環として、廃校になった小中学校をリノベーションして写真ギャラリーや、農業・食・観光がテーマの体験研修施設、地域人材育成交流センターなどを立ち上げてきた。同センターではヤフーなど各企業の社員と美瑛町で働く若者がチームを組み、課題解決を図る「地域課題解決プロジェクト」を実施。冬の観光に関するアイデアなどを事業につなげている。

馬場 ユニークな物件の魅力を伝え、希望者とマッチングする不動産サイト「東京R不動産」を14年前から運営している。そのノウハウを生かして「公共R不動産」を2年前に立ち上げた。リノベーションに向け魅力的な公共施設や公園などの物件を紹介し、民間企業とマッチング。リノベーションによる新たな公共空間の活用方法を提案する。例えば東京・豊島区の南池袋公園は、豊島区からの委託で民間企業が運営している。マルシェやパークウエディング、シネマ上映などを実施して集客している。

足立 公有資産の利活用を契機として、地域活性化やまちづくりの再構築につなげるためのポイントや課題は。

吉川 自治体の財政は非常に厳しく、これからは官民連携を通じた自主自立のまちづくりが必須。だ。当市の「大久保地区公共施設再生事業」は若者の定住促進や多世代交流のために、4㌶の公園の有効活用や、若年者向けの共同住宅の建設などを計画した。地元企業を支える担い手不足の問題もあるため、新たな世代が地域に愛着を持ち、まちを動かすための仕組みづくりが重要だと感じる。

馬場 「点」のリノベーションがつながって「面」になり、まちを変えていく。公共施設のリノベーションはその大きなきっかけになる。行政所有の物件をリノベーションして事業者を集めたところ地元企業や若者が覚醒して産業を興し、エリアリノベーションにつながった事例もある。これこそが経済が循環する新しい時代のまちづくりではないか。

佐竹 ヤフーが美瑛町と実施している人材育成の課題解決プロジェクトは、外部の立場からまちづくりに協力してくれる「関係人口」の増加につながっている。地域の人たちも良い影響を受けているため、今後そこから新たなまちの担い手を育成していければと思う。

田中 自治体へお願いしたいことは5つ。①民間への活発な情報開示②資金の役割分担③数十年規模の長期的な視点での利活用④既存の制度設計にとらわれない柔軟性⑤官民がきちんと向き合えるディスカッションの場の整備――だ。民間企業もまずは自治体の窓口に積極的に提案にいくことが大切だ。

馬場 官民が「同じ船」に乗ることが重要だと感じる。過去の公共施設の利活用における成功事例は、ヒエラルキーにとらわれないフラットな関係性で、一緒に物事を解決する姿勢で行われてきた。

佐竹 地方創生では無形の資産も含め、リノベーションをトータルでプロデュースする考えも必要だ。景色という無形資産を持つ美瑛町はこれまで様々な取り組みを行ってきた。そのため、担い手や新規就農者が外部から訪れてくれる一面がある。

田中 公共から見れば活用方法が難しい物件でも、民間から見ると「宝の山」であることも多い。自治体は情報発信を活発に行ってほしい。どのような取り組みが有効かを柔軟かつ中長期的な目線で一緒に考えていきたい。

吉川 行政の立場からすると、厳しい財政の中で「民間企業が何とかしてくれる」と捉えがちだった。しかし今後は民間の方々の立場を認識してお互いをよく理解した上で、持続可能なまちづくりを進めていきたい。

足立 官民連携による公有資産の利活用は、まだ手付かずのフロンティアだ。官民共に従来型の制度設計や発想にとらわれず、前例がなくても前向きに取り組んでいく気概が大切だ。ハード面だけでなくソフト面にも知恵を凝らし、長期的な目線で地域の担い手や人材を育成することが求められる。これらを具現化する上で、地域プラットフォームへの取り組みは大きな可能性がある。地域ごとの課題を踏まえた上で活動内容やメンバーを適切にカスタマイズし、進化させていくことが鍵を握る。

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