セッション SDGsから考える地域、都市、社会

2017年12月25日


<パネリスト>
村上 周三 氏(建築環境・省エネルギー機構 理事長)=写真左
月尾 嘉男 氏(東京大学 名誉教授)=写真中
竹本 和彦 氏(国連大学サステイナビリティ高等研究所 所長)=写真右


限界が近づく地球 総合的な取り組みを

村上 世界がSDGsに注目する理由の1つは、新しい人類社会の建設だ。「2030アジェンダ」等にも新しい人権宣言、新しい社会契約という言葉が入っている。国内でもSDGs達成への取り組みが自治体、企業等のステークホルダーの活動を活性化するだろう。

 もう1つは先進国の一員としての国際貢献を果たす義務だ。SDGsは世界の共通言語。企業にも自治体にも意思疎通がしやすく、実現可能性の高い推進システムだ。経済、社会、環境の統合的な取り組みで新たな価値を創造するということだ。

月尾 今、なぜSDGsか。それは地球が限界にきているからだ。30年に人口は83億人になり、今の生活水準を続けるなら資源面では地球が2つないと生活できなくなる。問題の1つは配分の矛盾だ。飢餓と飽食の落差は激しく、富の偏在による貧困の問題は深刻だ。地球温暖化が進み、難民もテロも増えている。

竹本 地球規模の問題について解決した部分もあったが、積み残された課題がSDGsに継承された。SDGsは17のゴールと、169のターゲットで構成する。重要なのは幅広いステークホルダーによる参加型の策定プロセスだ。国家、政府だけでなく、自治体、企業、市民団体などのステークホルダーの参加で目標を練る仕組みになった。多様なステークホルダーが果たす役割が重要だ。

村上 ステークホルダーの主役は、企業と自治体だ。自治体SDGsは地方創生とも深く関わる。自治体行政の積極的な取り組みが求められる。政策課題でもある地方創生をSDGsをテコに進めるのは政府の方針でもある。

竹本 SDGsは、社会や経済も含めた幅広いゴールになっている。日本社会全体としては、市民社会への浸透や理解は進みつつあるものの、国際的な動きと比べてスピード感は鈍く進展の余地がある。

若者が活躍する社会を 稀有な老人文化生かせ

村上 日本は既得権ががんじがらめで社会構造が硬直している。SDGsは現状を変える契機になりうるのか。

月尾 若い人が活躍する社会をつくることだ。日本はIT(情報技術)分野で出遅れている。若い人がもっと活躍し社会が受け入れることが重要だ。

村上 ジェンダー・ギャップの問題もある。日本は非常に女性参画が低く、改善が求められている。日本の歴史にはこれまでに2回、革命的に若者が参画した経験がある。明治維新と第2次大戦後だ。その後日本がいかに発展したか。その経験に照らしてもSDGsは社会変革の契機になり得るだろう。

月尾 来年は明治維新から150年だ。維新の特徴は若さと地方。そして、殿様や家老ではなく、下級武士や郷士が社会を変えたこと。地方創生の自治体SDGsで、地方や若い人が頑張ることが、明治維新に匹敵する改革につながるのではないか。

竹本 SDGsの文脈からみると日本では、高齢者の労働力も議論の余地がある。健康を維持する上でも雇用という点でも、SDGsの考え方は多種多様なチャンスにつながるのではないか。

村上 少子高齢化は日本が世界に先駆けて経験している。この問題の先達として、SDGsに新たな高齢化問題のターゲットやゴールを加える重要性を認識している。

月尾 日本には世界でも稀有(けう)な老人文化がある。その利点を生かし、これから多くの国が直面する高齢社会の手本としても、SDGsがうまく機能すれば素晴らしい。

竹本 SDGsは、世界に向けて日本の国際貢献の1つの柱として使える。知恵を集めて取り組んでいきたい。

月尾 日本の伝統や維持してきたものは、これから世界で高く評価されるはずだ。うまく伝えれば、本当に尊敬され、世界に貢献できる国になるだろう。

村上 少し前まで倫理規範だったCSRも、最近はルールになってきた。SDGsも世界の趨勢としてルールになりつつある。日本も世界や社会に貢献するという視点から、これまで以上に真剣に取組む必要がある。

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