パネルディスカッション 農業で実現する地方創生

2017年10月30日

<コーディネーター>
三輪 泰史 氏(日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト(農業))=写真

<パネリスト>
池本 博則 氏(マイナビ 執行役員 地域活性事業部 事業部長)=写真左上
篠田 昭 氏(新潟市長)=写真中上
古口 達也 氏(茂木町長)=写真右上
伊藤 順 氏(キースタッフ 代表取締役副社長)=写真左下
丸田 洋 氏(穂海 代表取締役)=写真右下


生産者所得上げる 仕組みづくり課題

三輪(コーディネーター) まずはおのおのの自己紹介や現状の課題をお話しいただきたい。

篠田 新潟市は政令市中最も食料自給率が高い、コメを中心とする大農業都市だ。地方創生の実現には農村地域を活性化する必要があり、14年に「新潟市革新的農業実践特区」の指定を受けた。規制緩和により、農業者と大手コンビニエンスストアの提携、耕作放棄地を小麦で再生する取り組み、農家レストランの開設などが進んでいるほか、各企業と組んで革新的農業を推進している。

古口 わが町は人口1万人ほどで、7割が山林の中山間地域だ。4年前には道の駅に加工場を立ち上げ、ユズやウメなどの生産品の全量買い上げをして6次産業化に成功した。「農業を活性化して農村をよみがえらせる」という考えは、個人の職業としての自立とコミュニティーの問題を混同していないか。まずは農家が農工業で収入を安定させ、十分な収入を得ることが基本だ。農村づくりは基本的には役場の職員の仕事であり、過度に農家に担わせるべきではない。

丸田 当社は新潟県上越市にあり、BtoBに特化した原料供給会社として原料の米穀を外食チェーンなどに販売している。私が考える農業・農村の課題は、高齢化の進展と基幹的農業従事者の減少だ。2000年に240万人いた基幹的農業従事者は、15年には175.4万人に減少した。50歳未満の従事者は全体の10%しかおらず、10~20年後にはわずか10%の人間で既存の広大な農地を守らなければならないことになる。

伊藤 地域の6次産業化支援を提供するコンサルティング会社として、のべ5000を超える農林水産業者や食品事業者に加工食品の開発支援と販路開拓支援を実施してきた。当社が捉える農業の問題点は、規格外の農産物が流通・販売されていない実態だ。当社では農産物を「食卓までの加工原料」と考え、規格外品を活用した商品開発を行い、生産者所得を上げる支援に取り組んでいる。

池本 当社は厚生労働省・農林水産省の受託事業をはじめとして、全国各地で農業受託事業を展開してきた。このたび、農業に興味がある人や農業を通して情報発信したい人など、様々な立場の人に向けた農業情報総合サイト「マイナビ農業」を運用開始した。ニュースやマーケティング情報、就農など8つにカテゴライズして紹介している。

地域と支え合い 経済発展を目指す

三輪 おのおのの取り組みについての周囲の反応や、今後の展望について教えてほしい。

丸田 当社では極早生(わせ)から超晩生(おくて)の品種まで、作期分散で固定費を下げて業務用米を作っている。地域の方々には非常に前向きに受け止められており、農地や労働力を提供していただいている。お互いに支え合い地域経済を発展させていきたい。

伊藤 当社は加工食品の産地間連携にも取り組んでおり、2つの自治体の特産品を互いの学校給食に安定的に供給したりしている。生産者が1次加工・販売して年商5000万円になった地域もある。地域食材が産業として成り立つ支援を今後も続けていく。

篠田 消費者のニーズを受けて、新潟平野では手間をかけた有機栽培や自然農法の農家が増えてきている。一方、水田センサーやドローンなど企業の技術を活用する大規模農家も重要だ。こだわりの農家と大規模農家の両輪で初めて農業の活性化ができると感じている。

古口 地方創生について自治体の内部で議論しても、似たような考えしか出ない。外部の人の新しい感覚が必要だ。ぜひ企業や関連団体の方々は、地方に向けて積極的に情報を発信してほしい。

池本 農業という分野は幅広く、日本には共通の情報インフラがない。そこで当社が法人・自治体とのネットワークを生かしてビジネスのスキームや自治体の思いを束ねたり、技術的能力を持つ会社と農業者を結び付けていきたい。

三輪 このような場を基点にしてつながりを持ち、人と人とのネットワークを築くことが、農業から地方創生という難しい課題に対する一番の解だ。農業から地元に対して思いを伝え、経済を回していく好循環を作っていければと思う。

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