パネルディスカッション 海外から見た東京の街~東京の無電柱化に期待すること

2017年9月28日

<パネリスト>
ロバート・アラン・フェルドマン 氏(モルガン・スタンレーMUFG 証券 シニアアドバイザー)=写真左
アレックス・カー 氏(東洋文化研究者 特定非営利活動法人 篪庵トラスト理事長)=写真中
井上 利一 氏(特定非営利活動法人 電線のない街づくり 支援ネットワーク 理事兼事務局長)=写真右


三浦 隆 氏
本橋 準 氏
田辺 博 氏
冨田 洋 氏

<コーディネーター>
松原 隆一郎 氏


災害時の救助、輸送を妨げ

松原(コーディネーター) 無電柱化の日本と海外の違いや課題、また防災・減災面について聞きたい。

カー 私が暮らす京都は観光地だが電線が景観を損ねる例は数多くある。無電柱化は欧米だけでなくアジアの中でも後れを取っている。高圧鉄塔群や携帯電話の基地局、地上機器のボックスが無秩序にあるのも課題だ。撤去が無理ならデザイン化やカモフラージュという方法もある。災害時に電柱は危険だ。神戸の震災では電柱倒壊による電気系統の故障が火事の原因にもなった。

フェルドマン 日本では技術革新が起こっても古い規制を維持し様々な非効率が発生する。新技術には成長の可能性があり、世界に日本の技術を売る商機もあることを頭に入れてほしい。自然災害は世界的に増えており、エネルギー供給をどう守るか考えることも重要だ。災害増加によりランニングコストが増えたため、今後は違ったアクション形成も必要になる。

井上 非営利組織(NPO)法人で電線のない街づくり支援を行っている。無電柱化を推進する市区町村長の会との連携や技術勉強会、また世界遺産、屋久島の無電柱化にも関わっている。東日本大震災後に現地で目に付いたのは津波で流された電柱だった。倒れた電柱のトランスから絶縁油がこぼれ出る状況も目にした。電柱は災害に非常にもろい。兵庫県芦屋市では防災の観点から街全体で電柱をなくす取り組みをしている。

三浦 東京都では災害時の電柱倒壊による道路閉塞を防ぎ、都民が安心・安全に暮らせるセーフシティ実現のために無電柱化を進めている。都道府県初の無電柱化推進条例が9月1日に施行となり、都道全線における電柱新設の原則禁止という取り組みを始めた。ほかに緊急輸送道路の無電柱化は2024年度末までに50%を目指す。

本橋 災害時の電柱倒壊が避難や救助活動、物資輸送に支障をきたすため、地中化設備のほうが自然災害の影響は受けにくいと考えている。無電柱化は防災の観点から非常に有効な方法だ。ただし災害で液状化が起こると地中機器も被害を受ける。すべて無電柱化ではなく地域ごとの対策が必要だ。

田辺 災害時には、地中化した電線の被害状況を早く知り通信を復旧させることが最大の使命になる。地上と比べどれだけ耐力があるのかなどの評価も大事になる。

冨田 東日本大震災で電柱倒壊による交通遮断を経験した。災害時に必要な電力源の喪失は打撃が大きい。防災力向上のために無電柱化は有効だ。道路の空洞は埋設物の埋め戻しの砂が震度5で沈下するために起こる。電柱の地中化工事の際、砂の代わりに沈下しにくい材料を使うと防災につながる。


景観や土地の価値に影響

松原 景観や観光面での無電柱化についてどう考えるか。

カー 電柱は景観的には目障りな存在だ。外国人から先進国ではないという印象も持たれる。日本の古い街並み、桜や紅葉は見事だが写真撮影時に電線は邪魔になる。今、日本は観光ブームだが、先を見据えると景観上、問題になる。

フェルドマン 日本では景勝地でも電線が景観の邪魔をしている。高圧電線は埋めにくいといわれるが、技術革新が必要になる。また資本形成も大事だ。日本に住みたいと思う外国人が増えれば地価は上がる。電線が土地の需要に与える影響も考えるべきだ。

井上 住宅地では電線の有無で不動産価値に差が出るという調査結果も出ている。観光では、宿泊客が少ないという問題を抱えた奈良・法隆寺周辺の街を無電柱化する取り組みが始まった。価値の高い観光資源があるのに電線が邪魔をしている例が多くみられる。

三浦 都内でも少しずつ無電柱化は進んでいるが、気づかない人も多いのではないか。東京五輪では全世界に街が映し出される。五輪前までに会場周辺では無電柱化を進めたい。

冨田 都道の無電柱化は進んでいるが、問題は区道。観光客は飲食店の多い繁華街に集まるが、大田区蒲田などは電線が張り巡らされた状況だ。道の狭い箇所の無電柱化をどうするかもカギになる。

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