【基調講演】松原 隆一郎 氏 無電柱化新時代を迎えて

2017年9月28日

東京大学大学院 教授
松原 隆一郎 氏

 電線の地中化は欧米の主要都市で19世紀から始まり、ロンドンやパリは無電柱化率100%を保っている。近年ではソウルが46%、台北も駅周辺に限れば95%と、発展めざましいアジアの諸都市でも急速に進み、日本は最も進んだ東京23区で32%、区外を含めれば10%に届かず、取り残された状態にある。これまでの無電柱化の手法は電線共同溝が中心で、コストが高い、事業者と自治体の調整が難しい、技術開発が進まない、住民の理解が得られないなどからはかばかしく進捗しなかった。けれども電線共同溝が採用されるのは歩道幅が片側2.5㍍と道路幅の広い国道や都道に限られ、今後より狭い道路を無電柱化するためには他の手法を積極的に検討しなければならない。

 そうした課題を受け成立した無電柱化の推進に関する法律には2つの特徴がある。第1条の目的には「災害の防止、安全・円滑な交通の確保、良好な景観の形成」とあり、これは電柱・電線が歩行者や住民にとって「外部不経済」であることを指摘している。阪神淡路大震災では電柱の9割が倒れ消防や復興の妨げとなった。首都直下型、南海トラフなどの大震災の到来が想定されてこなかったことが電柱林立の一因であり、東日本大震災を経て、根本的に発想を変えねばならない。

 また法律の第5条には、「事業者は主体的に電柱または電線の道路上における設置の抑制および撤去を行い、技術開発を行う」とある。電線共同溝による無電柱化は国がリードしてきたが、外部不経済であればその解消は事業者がリードしなければならない。それには技術開発が必須だ。事業者が技術を開発するのみならず、他社からの技術導入も進めることになろう。より優れた技術を持つ会社が競い合って無電柱化に参入するならば、無電柱化は成長産業ともなる。国は認証制度を設け安全性を確認しつつ、民間企業に競争を促すべきである。

 今後はどの道路で無電柱化を進めるのかについて、各自治体が条例で占用禁止の条件を指定していくことになる。電柱の新設禁止を打ち出した東京都の条例は、自治体間における条例制定競争の口火を切るものと期待されている。

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