【基調講演】橘川 武郎 氏 官民連携で目指す2020の水素社会

2015年8月24日

東京理科大学大学院
イノベーション研究科 教授
橘川 武郎 氏

 水素活用社会を実現するには、いくつかの課題がある。まずはコストの問題だ。CO2が発生するデメリットはあるがコンビナートから出る副生水素を活用したり、安価な石炭と組み合わせたりしてコストを抑えることが必要になる。そうして他のエネルギー源の弱点を補う形で水素を活用しながらインフラ整備を推進していき、いずれは再生可能エネルギーを用いて地球にやさしい水素生成の方法を実現させたい。そしてもう一つの課題は社会的受容性だ。水素社会実現には地域住民の協力が不可欠となる。安心と安全を確保して人々に受け入れられることが重要だ。

 水素と組み合わせる再生可能エネルギーのうち、地熱・小水力・バイオマスは、稼働率が高く出力変動も小さいが、規制緩和や物流コストなどを解決する必要がある。一方で風力・太陽光は、今後のコスト安が期待できるが稼働率が低く安定性がない。この問題を解決するには原発廃炉による余剰送電線の利用など送電網の確保や送電負荷を減らす仕組みの確立が必要だ。水素をガスのパイプラインに入れ込む「パワー・トゥ・ガス」も参考になる。

 日本は燃料電池に関しては先進国だが、水素インフラでは後進国だ。2020年を一つの区切りに、官民が同じ方角を向いてサプライチェーンの一斉立ち上げを行うことは極めて重要だ。「水素社会の実現」をレガシーに、水素利用先進国の第一歩を踏み出そう。

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