パネルディスカッション 水素が切り開く日本の成長戦略とスマート社会

2017年8月29日

<パネリスト>
鈴木 毅 氏(川崎市 臨海部国際戦略本部長)=写真


山影 雅良 氏
山崎 明良 氏
前川 治 氏
宮崎 淳 氏
原田 英一 氏

<コーディネーター>
橘川 武郎 氏


技術、仕組みで壁超える

橘川 水素社会実現に向けての課題は何か。

山崎 規制緩和、技術の向上、そして量産化だ。政府の指導や補助金の拡大、新会社設立といった動きの中で着実に進んでいる。

前川 経済性の向上が鍵になる。メーカーとして少ない電力で水素をつくる技術、少ない容量でたくさんの水素をためる技術などの開発に取り組んでいる。

宮崎 第一に水素の供給、インフラの整備を進めることだ。そのためには水素やステーションのコストを下げてプレーヤーを増やすこと。規制緩和や一般への啓発活動が重要になる。

原田 新エネルギー普及にはスケールメリットが非常に重要。水素の価値を経済価値に反映する社会システムにすれば適切な競争が起こり、研究開発やコストダウンが進むだろう。

橘川 他のエネルギーとの連携をどう進めるか。

前川 経済性も含め再生可能エネルギーを広めていく手段として水素は十分に補完できると考える。電力の許容量を超えたら水素で蓄え、必要なときに安定電源として活用する形だ。

原田 完璧なエネルギーはない。それぞれの良さを組み合わせて安価で環境に優しいエネルギーをつくっていくのが望ましい。コストが安い国のエネルギーを水素に変えて利用する手もある。水素燃焼で熱源のCO2を削減することも有効だ。

山崎 日本には300カ所ぐらいバイオガスが使える下水処理場がある。このバイオガスを使って水素をつくるなどの利用法も考えたい。

鈴木 川崎臨海部ではすでに石油と化学で水素を融通し合っている。多様なエネルギーと融通しやすい仕組みを作ることが重要だ。

宮崎 日本には埋もれた水素源がたくさんある。自治体とか地方ごとに洗い出してはどうか。また水素混焼など水素の手前のエネルギーとの連携も考えたい。

山影 燃料電池は必ずしも水素だけで使われているわけではない。エネファームでは都市ガスインフラを活用されるように、当面は既存の都市ガスインフラを使いつつ技術開発を並行して進めることが肝心だ。

官民でさらなる連携を

橘川 官民・地域連携は。

宮崎 水素ステーションの整備では四大都市圏以外でも熱心なところが多い。自治体と地域の企業群などがうまく連携を取って行動することができると思う。

鈴木 最終的に水素社会の恩恵を受けるのは住民。水素社会の将来像を目に見える形で具体化することが重要だ。日本や世界各地域の特性を生かした広域的な連携も必要である。

前川 水素はまだ開発段階で事業として独り立ちできていない。自治体と共に地域ニーズをくみ取りながら事業を進めたい。

山崎 コンパクト水素ステーションの整備を都内で進めている。このモデルがうまくいくと、狭い土地での設置も増えるだろう。

原田 神戸市と連携し、水素を活用した環境に優しい地域づくりを進行中だ。今後も自治体と共に地域の産業振興に協力したい。

山影 水素に関する規制は現状、水素を社会的に使うことを前提にしていない。規制する側も未知の世界であり、まずは官で連携する必要がある。電気と熱の両方を供給する民間事業者の参入にも期待したい。

橘川 水素社会の主役、生活者へメッセージを。

原田 日本では市民の考えが社会を動かす。環境とエネルギー確保、水素の有用性について一人ひとりが興味を持ってほしい。

宮崎 民族や宗教の違いがあっても、CO2を出さない、環境に優しい世界をつくるという思いがあれば世界が一つになれる。

前川 水素に対する一般の認識はまだ低い。当社としても関連イベントなどを通じて水素の良さを積極的にPRしていきたい。

山崎 FCVで高速道路などを走行すると非常に快適で楽しい。皆さんもぜひ一度乗って快適さを実感してはどうか。

鈴木 市民に水素社会を「自分事」として考えてもらう場として水素ネットワークを提唱したい。

山影 長期的には化石燃料依存構造から脱化石に必ずシフトしていく。その先の選択肢として水素社会がいかに魅力ある社会であるかを様々な形で示したい。

橘川 水素製造には必ず他のエネルギーが関わる。水素を考えることは環境問題全体を見通し、人類の未来を考える入り口としての意味があると思う。

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