【基調講演】柏木 孝夫 氏 水素社会へのロードマップ

2017年8月29日

東京工業大学
特命教授・名誉教授
柏木 孝夫 氏

 水素社会実現をけん引する柱は、FCV、分散型熱電併給システムとなる定置型燃料電池(700㍗クラス)、大規模電源(数十万~100万㌔㍗)となる水素発電に向けた技術開発だ。内閣府でまとめたエネルギー環境技術ロードマップで予測されるFCVの普及台数は2020年に4万台、30年に80万台。実現には水素ステーションの効率的整備が課題だ。

 定置型燃料電池は20年に140万台、30年に530万台の普及が予測。家庭用に固体高分子型、業務用に固体酸化物型と適材適所に導入が進むだろう。既存の都市ガスインフラが生かせ水素改質時に排出されるCO2はCCSとその利用、プラスチック化などでオフセット可能だ。太陽光発電と組み合わせゼロエネルギーハウスも実現可能だ。

 水素発電の時代になると一挙に大量の水素が必要になる。この分野のイノベーションでは豪州の褐炭から水素を取り出す際に発生するCO2を化学工場や植物工場でオフセットし液化水素を神戸に運び水素発電をする実証や、トルエンなどに水素を結びつけた常温輸送などの研究が進む。50年までに商用電力用のエネルギーとして水素を使うため調達コストを1立方㍍当たり30円まで下げるのが目標だ。

 経済産業省の水素燃料電池戦略協議会では20年まではセットアップを一挙に立ち上げるために補助金で自立化させ、次に水素大量導入やCO2フリーの水素導入に向けた施策を進めていく考えだ。福島県で再生可能エネルギー由来の水素を製造し20年に東京で使う計画も進む。都市から被災地・農山村への所得再配分と水素・自然エネルギー活用を一挙に膨らませると期待できる。

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