「ZEBは業務部門の省エネの切り札」

2018年2月2日

 ガイドラインは2016年度から、これまでに中規模オフィス、小規模オフィス、老人ホーム、スーパーマーケットの4種類を作りました。いずれも建築件数が多く、関心も高いと思われることから先行させました。今後は病院、学校向けも作成したいと考えています。

 一方、民間事業者の自主的な取り組みを後押しする仕組みとして、ZEBプランナー登録制度とZEBリーディング・オーナー登録制度も今年度から始めました。先導的な役割を果たす事業者やオーナーの情報をオープンにし、ZEBへの取り組みを拡大していく狙いです。プランナーは設計、施工、コンサルティング会社など約70社が登録。オーナーは約140件(約40社)の登録があり、ZEBに関心を持つ方々の相談窓口や情報収集源になっていただけると考えています。プランナーが関与した案件のみを実証事業の対象とするなど、認知度を高める工夫もしています。

建物の用途に応じ対策深掘り

――今後の展開と課題についてはどのようにお考えでしょうか。

 施策のベースとなるのが、2015年に作成したZEBロードマップです。自律的な普及というゴールに向け、ロードマップのフォローアップ委員会を設置しており、実証事業で得た知見や課題について対策を検討し、随時施策の見直しを進めています。

 これまでの実証事業により、建物の用途によって、ZEBに必要な対策は相当程度異なるという課題が見えてきました。設計はもちろん、運営方法なども含めてもっと深掘りして検討する必要があり、そのためにも事例をさらに増やしていきたいと考えています。ZEBを達成した建物の種類が増えれば、似たような建物を持つオーナーも関心を持ちやすくなります。

 もう1つの課題は、持続可能な取り組みにすることです。補助金に頼っていては限界があります。自律的な普及にはビジネスモデルを確立しなければなりません。その際、省エネや省CO2といった価値の訴求は重要ですが、それだけでは十分な広がりは容易ではないかもしれません。省エネビルというと、大事だけれども高級感が感じられないという方もおられると思いますが、その建物で働く人の快適性向上の可能性等を含め、ZEBの多様な価値への理解を深めていければと思います。

 また、ZEBの効果の見せ方にも工夫が可能です。運用段階も含めて本当にコスト削減につながるのかどうか。客観的なデータや情報を提供できれば理解がさらに広がるでしょう。日本の省エネ技術は世界に誇れる優れたものであり、その価値を適切に見える化して、優位性を産業競争力の向上にも生かしていく必要があります。ZEBの普及促進には、エネルギー政策だけに止まらない目的があると思っています。



吉田 健一郎(よしだ けんいちろう)氏

京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修了。通商産業省(現・経済産業省)入省。産業技術環境局研究開発課企画官(研究開発担当)、製造産業局自動車課 電池・次世代技術・ITS推進室長などを経て2016年6月より資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課長。

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