「ZEBは業務部門の省エネの切り札」

2018年2月2日

経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー課長
吉田 健一郎 氏

吉田 健一郎 氏

 政府は建物のエネルギー消費をゼロに抑える「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の普及を促進している。温暖化対策の目標達成に向け、課題となっている業務部門の省エネ策の切り札と位置付けているためだ。具体的にどんな施策に力を入れているのか、課題は何か。経済産業省資源エネルギー庁の吉田健一郎・省エネルギー課長に聞いた。

支援通じ自律的な取り組み促す

――ビルを含む業務部門の省エネに力を入れていますね。

 2015年の日本全体の最終エネルギー消費は石油換算で約3.5億キロリットル。1973年に比べると1.2倍です。この間、国内総生産(GDP)は2.5倍に増えていますので、省エネ努力により、かなり抑えられてきたと言えます。ところが、部門別にみると、産業部門が0.8倍とエネルギー消費は減少しているのに対し、家庭部門は1.9倍、業務部門は2.3倍と大きく増えています。

 経済産業省が2015年7月にまとめた長期エネルギー需給見通しでは、2030年度に最終エネルギー消費で5030万キロリットルの省エネを見込んでいます。エネルギー消費効率は35%の改善が必要です。これはオイルショックをはさんだ1970年から1990年までと同じレベルの省エネが必要であることを意味し、すでに省エネ努力を重ねてきた現在では相当高い挑戦となります。業務部門は1226万キロリットルの省エネが必要で、ZEBはその有力な手段と見ています。

――具体的には、どんな対策を進めていますか。

 省エネ法による使用段階の規制とともに、建築物そのものの省エネを促進することが大事だと考えています。1つは規制による強制的な措置です。2020年までに規制の必要性や程度、バランス等を十分に勘案しながら、省エネ基準への適合を段階的に義務化するほか、建材へのトップランナー制度の導入を通じて新築建築物等の性能を底上げします。

 もう1つは高度な省エネを支援することで、自律的な取り組みを広げていくことです。補助金等により、ZEBやZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の導入を支援し、将来の標準性能の先導役として商用化を促していきます。その際、建築物としての価値を実証し、普及させることが重要です。①省エネ・省CO2による環境不動産としての価値、②労働生産性、快適性向上による価値、③災害時の事業継続性による価値、などです。

――ZEBについては、先進事例の収集や紹介に力を入れているそうですね。

 環境省の連携事業と合わせ、50%以上省エネを達成したZEB Ready、75%以上達成したNearly ZEBも含めて、2016、17年度で約80件の実証事業を行いました。これらの事例を活用して、技術の組み合わせ、効果、コスト、設計などの情報提供を受け、建築業者向けに設計ガイドラインを作成しています。また、建物のオーナー(施主)向けには、導入のメリットや必要な手続き、支援策や事例などをわかりやすく解説したパンフレットを配布しています。

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