「民間企業のパートナーとしてSDGsに貢献」

2017年12月25日

企業の進出が地域の発展につながる

――具体的に、これまでどんな事業を進めてきたのでしょうか。

 最近の事例では、アフリカのセネガルで、カゴメと三井物産と協力した農業支援事業があります。もともとセネガルではODA事業として、JICAも参加し、稲作を支援してきました。カゴメと三井物産は、稲刈りが終わった後の畑でトマトを栽培し、加工するビジネスができないかと考え、事業化に向けた調査をJICAも協力して実施しました。既存の基盤を活用し、連携による相乗効果を狙ったもので、パートナーシップの好例だと思います。

 JICAが得意とするボランティアの仕組みを活用した人材育成も進めています。民間企業から途上国に人材を派遣し、技術指導をしてもらう民間連携ボランティアは、企業にとっては、グローバル人材の育成、現地ネットワークの構築、商習慣や潜在的市場の把握、といったメリットがあります。最近も、中小の機械メーカーからタイに1年間人材を派遣し、職業訓練校で工作機械やCADの操作方法を指導してもらいました。その方は派遣後、タイの自社工場の副工場長として赴任し、活躍しています。

 健康・福祉も重要な分野です。SDGsでは、「全ての人が生涯を通じて必要な時に基礎的な保健サービスを負担可能な費用で受けられること」をユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)として定義し、実現を目指しています。12月13、14日には日本で世界銀行、世界保険機関(WHO)なども参加した「UHCフォーラム」が開催され、JICAも共催者として名を連ねました。国民皆保険を実現している日本は、人材育成や技術、資金支援など幅広い分野で貢献が期待されています。


JICAの民間連携の取り組み

――SDGsに取り組むうえでの課題や今後の展開はどう考えていますか。

 途上国は法制度や人材、インフラなど課題だらけと言ってもいい状態です。高い技術を持つ日本企業が途上国に進出し、収益を上げつつ持続可能な事業を展開することは、その国・地域にとっても生活の改善や雇用拡大につながります。JICAとしても、これまで各国政府や民間組織との間で築いてきた信頼を資産として、企業と共に課題を解決していきたいと思っています。

 また、従来のように一方的に先進国から途上国に支援する時代ではありません。経済格差やジェンダーなど、SDGsのゴールの中には先進国、途上国に共通の課題も多くあります。海外だけでなく、地域経済の活性化など、日本経済や社会への貢献も必要になると考えています。



前田 徹(まえだ とおる)氏

1985年東京大学法学部卒、外務省入省。国際協力局国別第一課長、同総合計画課長、インドネシア大使館公使、ジュネーブ国際機関日本政府代表部公使などを経て、2015年10月独立行政法人国際協力機構(JICA)総務部長、2017年1月より現職。

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