「川崎臨海部を水素社会実現の突破口に」

2017年9月12日

 また、東南アジアのブルネイから輸入した水素を火力発電の燃料に使うプロジェクトも2020年の開始を目指して進められています。現地では、次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)が液化天然ガス(LNG)の生産プロセスで発生するガスを調達し、専用設備を建設して水素を取り出します。水素を船で運ぶ際は千代田化工建設が開発したSPERA水素技術を用いて常温・常圧下で液体の形にして体積を500分の1に圧縮。川崎に着いたら再び気体の水素に戻し、東亜石油京浜製油所域内の同社傘下の天然ガス火力発電設備で、天然ガスに一定割合の水素を混ぜて水素混焼発電を行います。

――さらに長期的な展望はありますか。

 将来は、大規模な風力発電や太陽光発電による電気分解で水素を生成し、それを燃料電池などクリーンなエネルギーで走る船舶で運び、水素だけを燃やす水素専焼発電で使うといった、究極のクリーンエネルギーとして活用する構想もあります。これを大きな幹として、様々な事業モデルが考えられます。水素は生産、運搬、貯蔵にかかる費用が高いのが難点ですが、技術の進展により、作れる時に作り、使いたい時に手軽に使えるようにするのが長期的な目標です。

 さらに今後は、ICT(情報通信技術)の活用が課題となります。エネルギー関連設備は需要と供給を制御するなどインテリジェントな仕組みが効率化のカギを握るからです。幸い、川崎にはこうした取り組みを進められる様々な産業の集積があります。現在策定に向けて検討を進めている30年後の川崎臨海部のビジョンでは、域内ゼロエミッションとクリーンエネルギーの実現を掲げており、川崎から水素社会実現への突破口を切り開いていく考えです。



鈴木 毅(すずき たけし)氏

川崎市 臨海部国際戦略本部長。
1982年川崎市役所(総務局)入庁。2012年4月総合企画局スマートシティ戦略室長。2013年9月総合企画局担当理事。2016年4月から現職。

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