「川崎臨海部を水素社会実現の突破口に」

2017年9月12日

川崎市
臨海部国際戦略本部長
鈴木 毅 氏

鈴木 毅 氏

 川崎市が臨海部を中心とした産業集積を生かした「川崎水素戦略」を進めている。工場や海外から調達した水素をパイプラインなどで需要家に運ぶネットワークを構築。企業と協力し、様々な分野での水素利用モデルを展開することで、水素社会の実現を後押ししていく考えだ。事業を担当する鈴木毅・臨海部国際戦略本部長に具体的な取り組みを聞いた。

首都圏のエネルギークリーン化

――川崎市は鉄鋼や石油、化学など国内有数の産業集積地として知られます。いま、水素社会の実現に力を入れているのはどんな理由からでしょうか。

 川崎臨海部というと、製造業の集積が注目されますが、実は発電の能力も有数の規模があります。発電能力の総量は772万キロワット(原子力発電所7基分)で、首都圏の1都7県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)の民生利用をまかなえる規模です。電力・ガスなどのエネルギーは地域の主要産業であると同時に、首都圏全体の市民生活や産業活動の基盤を担っているわけです。

 現在は石油や天然ガス、石炭といった化石燃料が主力ですが、今後はより環境への負荷が少ないエネルギーが求められます。究極のクリーンエネルギーである水素の活用へとシフトすることは、首都圏全体のエネルギー消費のクリーン化につながります。

 また、川崎市はより力強い産業都市づくりのため、グリーン、ライフ、ウェルフェアの3つのイノベーションを推進しています。市は長年、公害対策として環境改善に取り組んできました。地球温暖化をはじめとした環境問題の課題解決のためには、絶えず技術革新を起こし続けていくことが使命であるとの考えから、あらためてグリーンイノベーションを掲げて取り組みを進めています。水素プロジェクトをその中核に位置づけ、さらなる脱・炭素化にチャレンジしていく考えです。

――具体的には、どんな取り組みを進めていますか。

 まず、大きな戦略として、①水素供給システムの構築、②多分野にわたる水素利用の拡大、③社会認知度の向上、の3つがあります。①は水素社会への入口、②は出口、③はブランド力とも言い換えられます。水素にかかわる技術のシーズ(種)の多くは企業が持っていますが、どのように利用できるかといったニーズは生活者である市民等に聞かないとわかりません。私たちは両者をつなぐ「マッチング」こそ、自治体の役割だと考え、様々なモデル事業を提案しています。

 具体的には、企業や他の自治体などと連携・協力し、現在、6つのリーディングプロジェクトを進めています。例えば、東芝と組んだ「水素BCP(事業継続計画)モデル」では、同社の自立型水素エネルギー供給システム「H2One」の開発に協力しました。災害などの非常時には貯蔵した水素で、300人が1週間生活できるだけの電力・熱を供給します。この設備は東扇島のスポーツ広場に2年前から設置して実際に運転を続けており、多くの市民に体感していただいているほか、海外からもエネルギー関連団体や行政関係者などが多数視察に訪れています。

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