「エネルギー自由化で描く超スマート社会」

2016年10月31日

東京工業大学
特命教授・名誉教授
柏木 孝夫 氏

柏木 孝夫 氏

 2020年以降の地球温暖化対策の枠組みを定めた「パリ協定」が11月4日に発効する。世界共通の目標として、産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑えることを掲げ、すべての国が参加するのが特徴だ。日本は温室効果ガスを2030年度に、13年度比26%減らす目標を掲げると同時に、電力・ガス自由化による効率化も打ち出した。エネルギー自由化を温暖化対策と経済成長にどうつなげればよいか。東京工業大学の柏木孝夫教授に聞いた。

「パリ協定」への対応、日本は遅れていない

――新たな地球温暖化対策「パリ協定」が11月4日に発効します。日本は発効までに批准が間に合わず、協定の具体的なルール作りに当初は参加できなくなりました。

 日本の対応は遅れているのではないか、との批判もありますが、私はそうは思いません。2015年12月にパリで開かれたCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)でパリ協定が採択されたことを受け、日本はすでに温暖化ガス削減に向けた総合的なエネルギー戦略を打ち出しているからです。

 それが「エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI2050)」です。安倍晋三首相の指示を受け、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の下に「エネルギー・環境イノベーション戦略策定ワーキンググループ」を設置し、私が主査となって今年4月にとりまとめました。日本は他国に先駆けて国家戦略を定めているわけですから、パリ協定発効から1年間はオブザーバーとして諸外国の意見を聞いたうえで、じっくりと我が国の対策を広げていくことが重要ではないでしょうか。

――NESTI2050では、具体的にどんな戦略を描いているのですか。

 政府が今年1月に策定した「第5期科学技術基本計画」が基になっています。この計画では、世界に先駆けた「超スマート社会」の実現をうたっています。すべてのモノがインターネットにつながるIoTや、人工知能(AI)、ビッグデータといったサイバー空間と、現実社会であるフィジカル空間が高度に融合した姿が超スマート社会であり、その実現に向けた一連の取り組みを「Society 5.0」と呼んでいます。

 Society5.0は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会という位置づけです。必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、人々が生き生きと快適に暮らせる社会であり、人々に豊かさをもたらすことが期待されます。

 NESTI2050は、このSociety5.0の到来によって、エネルギー・システム全体が最適化されることを前提に、二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けてポテンシャル、インパクトが大きい有望な技術を特定し、中長期的に開発を推進していきます。パリ協定では全世界で約300億トン超のCO2削減が必要としていますが、このうち約3分の1にあたる数十億~100億トン超の削減をめざし、温暖化防止に貢献していきたいと考えています。

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