「地方創生は住みやすい都市から」

2018年6月18日

DBJ都市の骨格を創りかえるグリーンインフラ研究会座長
東京農業大学准教授
福岡 孝則 氏

福岡 孝則 氏

 超高齢化と人口減少に直面する日本で地域をどう維持すべきか――。5月18日に東京都大手町の日経ホールで開かれた「日経地方創生フォーラム」では、「官民連携と地域連携で実現する地方創生」をテーマに産官学の識者が意見を交わした。基調報告で、欧米で進むグリーンインフラ(緑地や土壌の水循環機能を活用し複合的な便益をもたらす自然システム基盤)を紹介した、DBJ都市の骨格を創りかえるグリーンインフラ研究会(DBJグリーンインフラ研究会)の福岡孝則座長に地域コミュニティーの将来像を聞いた。

大都市に緑と水、米西海岸などに先進事例

――グリーンインフラの概念やメリットを教えて下さい。

 「欧米の一部では都市域のグリーンインフラ整備が進んでいる。DBJグリーンインフラ研究会では国土交通省や東京都、企業からも担当者に出席していただき、日本でどのように推進すればよいのか議論。提言をまとめた報告書を公表している」。

  「グリーンインフラの米国での定義は、緑や土壌が持つ水循環機能を模倣して緑地などに機能を持たせるというものだ。欧州では生物多様性の確保などにも重点を置く。参考になるのは、国土が狭いシンガポールの公園づくりだ。都市河川と公園を一体整備し、住民が川辺にアクセスして生物に触れることができる」

  「日本では河川と居住区域の間が堤防などで区切られ、住民が自由に水辺に近づくことが制限されていることが多い。防災のため覆いをかぶせ暗渠(あんきょ)化し、河川があることを人々が視認できないケースもある。フランスでは暗渠にした小河川の覆いを取り外すという困難な事業に取り組み、水辺の風景が復活した成功事例がある。米西海岸のポートランド市では、グリーンストリートと言って道路と歩道の間に雨水排水用の緑化した溝を設ける施策がある」

  「都市部に自然の力を組み込み防減災、心身の健康、コミュニティ再生など社会的課題を解決し多面的な価値を創出することがグリーンインフラの基本的な考え方だ。住みやすさを高めながら、建物緑化や水質浄化を実現する。計画づくりの核は都市公園の多機能化だ。公園を起点にグリーンインフラを戦略的に整備。住みやすさを向上させる。日本は2017年に都市公園法を一部改正した。敷地内の社会福祉施設整備などの規制が緩和され、グリーンインフラを推進する条件が整いつつある」

――日本で推進するにはどのような工夫が必要ですか。

  「グリーンインフラは街区単位の推進が効果的だ。日本の再開発は敷地レベルで見ると魅力的な計画が多い。規模を街区に広げるのが課題だ。その場合の受益者負担をどうするか、地域の潜在ニーズを掘り起こすにはどうすればよいのか、地域の工夫が求められる」

 「例えば、道路は開発に関する規制が厳しいが、以前と比べて交通量が減っているのなら歩行者空間や自転車道の拡幅など利用方法を再考した方がよい。米国のように公共部門が多部局連携で課題に取り組むことも必要だ。米ポートランド市では下水道再整備で独自の公債を計画するなど資金調達に知恵を絞った。行政などは、グリーンインフラ整備で住民の支持を集めるインセンティブ(誘因)を用意しなければならない」

 「実際、官民連携を含む様々な創意工夫により、成果をあげる自治体も出始めています。ただ、こうした例は少数派で、全国的にみると、計画を策定したのはいいが実施に移せていない自治体の方が多いのが現状です。過疎化や高齢化のスピード、財政制約などを考えれば、一刻の猶予も許されません。従来型の発想を排し、前例のない事業にも果敢に取り組む気概を持って、地域づくりを進めていく必要があります。また、これまではハードばかりに目を向けがちでしたが、ソフトも含めて柔軟な発想が求められていると言えるでしょう」

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