「公有資産は可能性を秘めたフロンティア」

2018年3月9日

民間を巻き込む提案力が重要

――自治体にとっては人材育成が大きな課題のようです。

 公有資産活用もそれ以外も含め地域創生全体に係る大きな課題と思います。長野県飯田市では、高校生くらいまでに地域に愛着を持てるような教育を実践しているそうです。進学などでいったんは都会に出ても、また地元に戻りたいと思ってもらえる。そんな長期的な視点での取り組みが大切ではないでしょうか。

 また、民間業者も含めて地域経済の担い手を育てていく観点も必要です。地域の建設業者などでは、官民連携などによる複合的な地域開発などに対応できないとして、従来のような個別発注を求めるケースもあると聞きます。しかし、それでは官も民も成長の機会を逸してしまいます。1社では難しくても、大手と地域事業者や、複数業種間のチームで取り組めるよう、官民が日ごろから情報共有やネットワーク構築するための地域プラットフォームを整えておく必要もあるでしょう。

 ユニークな取り組みをしているのが、北海道美瑛町です。人材研修のための施設を探していたヤフーが、たまたま同町に廃校があることを知り、そこを拠点に他の企業も巻き込んだ地域活性化事業を進めています。ヤフーは若手の幹部候補を送り込み、本業とは全く異なる様々な難問に取り組むことで、課題解決能力の向上に役立っているそうです。一方、美瑛町にとっても最先端のIT企業で働く人材との交流は大きな刺激となっており、Win-Winの関係ができあがっています。

――財源問題も避けて通れないですね。

 国も地方も財政状況は大変厳しく、公有資産の老朽化対策として安易に地方債を発行するといった政策は難しくなっています。上手な形で民間のノウハウや資金を活用していくことが重要でしょう。民間がリスクを取らずに自治体がリスク資金を提供する、従来のようなやり方では限界もあります。民間にとって、多少のリスクはあっても、やり方次第でリターンが見込める、つまり投資したいと思わせるような魅力のある事業をどう提示するかが問われると思います。

 とは言え、自治体が全く資金を出さなくていいというわけではありません。例えば、エリア再生の皮切りに、まず自治体が民間の古い物件を買い取って、政策効果を見込み低い賃料で民間に貸し出すという事例もあります。若いクリエーターが集まるようになり、周りの店舗も活性化するといった効果がありました。急がば回れ、損して得取れ、というわけです。戦略性を持ち、長期的な視点で投資の回収につなげる発想も重要となります。

――最後に、政投銀の役割についてどうお考えですか。

 地域の課題は地元の金融機関の方が詳しいですが、私たちは全国にネットワークがあり、様々なソリューションの事例を知っています。また、民間企業を巻き込んで進める事業は実現までに時間がかかる、いわゆる懐妊期間の長い事業になることが多い。そのような中、私たちは長い時間軸で取り組めるという側面もあります。地域金融機関等との連携のもと、官民の間や民民の間の仲介役となったり、情報発信などでアドバイスしたりして、官民がwin-winになるような事業スキームを作り上げるお手伝いをしていきたいと思っています。


足立 慎一郎(あだち しんいちろう)氏

1992年一橋大学経済学部卒、日本開発銀行(現・日本政策投資銀行)入行。2003年内閣官房都市再生本部事務局派遣、2010年地域企画部課長、2016年6月より地域企画部担当部長・PPP/PFI推進センター長。

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