「『スケルカマップ』で無電柱化を加速」

2017年10月5日

狭い道ほど無電柱化の必要性は高い

――実際に、スケルカ技術は東日本大震災や熊本地震のあとの交通・物流ネットワークの迅速な復旧に貢献したそうですね。

 東日本大震災の時は3日目から被災地に入り、電柱が津波で流されたり、将棋倒しとなって交通ネットワークが分断されるのを目の当たりにしました。停電した信号機のために渋滞したり、電灯が無く日中しか作業ができないなど、無電柱化の推進は減災面で喫緊の課題だと再認識しました。

 一方、津波の被害に目が向かいがちですが、東日本大震災では道路陥没の被害も相当数ありました。特に、仙台市の地下鉄駅周辺では、震度5以上の余震によって埋め戻し砂が沈下し、道路が一車線100メートル以上陥没するなど、全面復旧には1年以上もかかりました。熊本地震でも道路陥没が多発しました。当社は、全国の道路でこれまで5万箇所以上の空洞を発見し陥没事故を予防してきました。こうした実績に対し、スケルカ技術は2012年に東京都ベンチャー技術大賞特別賞を受賞し、2015年には都の先進的防災技術実用化支援事業にも選ばれています。


――都の無電柱化の取り組みについては、どのようにお考えですか。

 無電柱化を真っ先に進めなければならないのは、歩道のない狭い道。つまり、区道です。広い国道や都道では、歩道部に多くのライフラインを埋設できます。一方、狭い道は無電柱化の工事がしにくいだけでなく、周辺には住宅地が多く、災害時には消防車なども入りにくい。つまり、電柱の倒壊による被災リスクが最も高い地域なのです。ですから、区市町村の無電柱化の取り組みを支援する都の方針は防災・減災面でも非常に有効だと思います。さらに、埋設物の埋戻し時に砂でなく空洞が発生しにくい材料を使用すれば、陥没予防にも役立ちます。

 もう一つ、これは都に限りませんが、無電柱化の取り組みに欠けているのはスピード感ではないでしょうか。工事に7年もかかるのは長すぎます。例えば、2~3年と期限を区切って行政・企業、さらに住民も協力して進めれば、スピードは上がると思います。

 2016年11月に福岡・博多駅前で起きた大陥没事故が発生しました。何よりも世界が驚いたのが、わずか1週間で復旧したスピードです。実は、陥没直後に関係者が集まり、埋め戻しは砂でなく、早期に固まり陥没の生じにくい流動化処理土を使用することとしました。また、インフラ関係者は直ちに復旧できる様に材料を事前に準備し、手戻りなく一気に直しました。まさに、地下インフラ3Dマップの様に事前に地下インフラの状況が分かれば施工期間が大幅に短縮できる事を証明しました。

――スケルカは防災以外にも用途がありそうですね。

 その通りです。3Dマップではイメージだけでなく、実際の距離も測れます。3Dマップデータを共有すれば、ビジネスチャンスはあらゆるところに産まれそうです。手前味噌ですが、グーグルマップよりも進化した「スケルカマップ」として、その利用と活用を呼びかけていきたいと思っています。


冨田 洋(とみた ひろし)氏

1977年慶應義塾大学工学部応用化学科卒業。ジオ・サーチ社を1989年創業し、世界初の道路陥没を予防する地下空洞探査システムを実用化。1998年企業連合による地雷除去NGO JAHDSを創設し地雷除去活動を通じて経済復興にも貢献し、活動を現地団体へ2006年継承。地雷探知技術を進化させ、世界初の地中の空洞や埋設物を高速高解像度で可視化できる「スケルカ」を実用化。2011年東日本大震災直後から被災地での道路陥没予防と国内外の事前防災・減災に向けて活動中。2015年慶應大学理工学部に寄付講座「貢献工学・減災学」を開設。

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