「稼げるまちづくり~世界のONOMICHIへ」

2017年6月23日

「空き家」再生で人を呼び込む

――空き家を改修して移住者や旅行者を呼び込む事業にも力を入れているそうですね。

 こちらも民間の活力を生かしたプロジェクトです。もともと、尾道は急な坂が多く、山沿いに住む高齢者が引っ越して空き家となった家屋が多くありました。市は2002年に入居希望者と家主のマッチングを支援する「空き家バンク」事業を始めましたが、情報提供だけでは限界もあり、なかなか成果が出ませんでした。

 そこで2009年から、地元出身の豊田雅子さんが設立したNPO法人「尾道空き家再生プロジェクト」に、入居希望者への連絡や案内といった業務を委託することにしました。民間ならではの、かゆいところに手が届くサービスが奏功し、これまでに登録数の約4割にあたる83件で買い主や借り主が見つかりました。

 単に空き家を引き渡すだけでなく、ゲストハウスなど滞在型施設に改修するという独自の取り組みも注目されています。長い時間をかけて改修を進める建物もあり、全国からボランティアや大学生、自治体関係者らが手伝いや視察に訪れています。

――空き家再生の取り組みは国からも高く評価されていますね。

 空き家再生のほか、市内に残る文化財の保存活用や、歴史的な町並みを生かした映画やドラマなど映像文化の振興といった取り組みが評価され、2013年度に文化庁の「文化芸術創造都市」に指定されました。尾道市には国宝4件を含む381件の指定・登録文化財があり、2011年3月に歴史文化基本構想及び文化財保存活用計画を策定しました。また、2012年度から10年間にわたる歴史的風致維持向上計画を進めており、歴史的建造物の保存活用や民俗芸能の継承など、歴史と文化を生かしたまちづくりを推進しています。

 こうした取り組みにより、2015年度には「尾道水道が紡いだ中世からの箱庭的都市」が、2016年度には「日本最大の海賊の本拠地・芸予諸島~よみがえる村上海賊の記憶」が、それぞれ日本遺産として認定されました。2年連続で認定されたのは全国で唯一です。知名度が向上し、外国人観光客は2007年の2万人から2015年には21万人へと10倍に増えています。また、千光寺公園のロープウエー利用者も2007年の26万人から2016年には45万人に増えるなど、古くからの観光地も活性化する効果が出ています。

 もう一つ、「建築の街」としてもアピールしています。市の沖合にある百島(ももしま)の支所庁舎と、向東認定こども園の設計を著名な建築家である伊東豊雄氏にお願いしました。また、百島では日本を代表する現代美術家の柳幸典氏が中心となって、旧中学校校舎を再活用した「ART BASE 百島」を拠点としたアート・プロジェクトが進行中です。先ほどお話ししたJR西日本の尾道駅再開発はアトリエ・ワンという建築家ユニットにデザイン監修を担当してもらう計画です。

 尾道市にとって観光は生命線です。さまざまな分野の方々と一緒になって、総合産業として展開し、個性ある街づくりに取り組んでいきたいと思っています。


平谷 祐宏(ひらたに ゆうこう)氏

1977年3月、山口大学教育学部卒。2003年9月、尾道市教育委員会教育長。2007年4月、尾道市長(第32代目)に就任、現在3期目。

このサイトについて

日本経済新聞社について