「持続可能なまちづくりへ、利用者目線のイノベーションを」

2015年12月22日

建築環境・省エネルギー機構
理事長
村上 周三 氏

村上 周三 氏

 持続可能な社会の構築に向けて、都市はどのような課題を抱え、それらにどのように取り組んでいけばいいのか。これからの都市を構想するに当たって求められる視点とは何か。自治体の実情に詳しい村上周三氏に聞いた。

さまざまな成功事例を発信し、自治体の奮起促す

――「持続可能性」という観点から、現在、都市が抱えている課題をどのように見ていますか。

 まず、地球環境問題については、CO2(二酸化炭素)の排出量は増加の一途をたどり、21世紀に入ってますますそのペースが加速しています。11月末から12月上旬にかけてCOP21(第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が開かれ熱心な審議がなされました。しかし過去の実績から見て、今後早急に成果が上がることは期待しにくいのが実情です。低炭素化への取り組みや気候変動に適応するための防災などは、国だけの問題でなく、全国1700余りの自治体にも等しく関わってくる課題です。

 地球環境の持続可能性とは別の視点になりますが、人口減少は多くの自治体の持続可能性について深刻な問題を提起しています。少子化の原因はさまざまな角度から分析されていますが、明らかなのは、子育てにかける予算が少なすぎるということ。高齢化社会になると、政治的判断が高齢者寄りに偏ってしまう、という構造的な問題があります。

――少子高齢化から派生するさまざまな問題も深刻化していますね。

 地方の衰退が進み、「限界集落」のような問題に対して有効な手立てが見出せていません。過疎化対策を進めるうえでインターネットの活用は欠かせませんが、「ネットワーク社会」では、デジタルデバイドによって高齢者が阻害されがちになるという問題もあります。少子高齢化や地方衰退と表裏一体の関係にある自治体の財政も、多くの負債を抱えて持続可能性の危機にひんしているところが多数あるという状況です。

 環境未来都市構想や地方創生の取り組みは、自治体がそうした課題に対応していくためのベストプラクティスを集積して共有し、全体を底上げしていく役割を担っています。

――「環境未来都市構想」や「地域活性化プラットフォーム」などの検討の場で、有識者の立場から積極的に発言されています。

 環境モデル都市を含む環境未来都市構想は、優れた自治体における先進的成功事例を発掘して見える化し、横展開していこうという取り組みです。頂上を一層引き上げることで、裾野も広がっていくことが期待されます。一方、昨年始まった地域活性化プラットフォームは、いい事例を選んでお手本にするといった手法は同じですが、全国の自治体に、独自の「地方版総合計画」の策定を依頼しており、どちらかというと、底上げを図るほうに重点を置いた地方創生策といえます。

 全国から集まる提案には似たものが多く、独自性などの面でもっと努力してほしいと思います。そもそも危機感や意欲が乏しい自治体も多いのですが、危機意識を持ってもどのように展開すればいいかわからないという実態もあります。環境未来都市や地域活性化プラットフォームの取り組みを通じて、大小さまざまな自治体の成功事例を地道に発信していくことが、そうした自治体の奮起を促すきっかけになればと考えています。

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