日本経済新聞社デジタルビジネス局主催による「次世代マーケティング講座 B2B企業におけるオウンドメディア(自社サイト)戦略とは」が3月6日、開催された。顧客との関係強化のためのコミュニケーション戦略において、オウンドメディアとソーシャルメディアなどのアーンドメディア、そして広告などのペイドメディアとの連携が重要になっている。同セミナーでは、B2B企業におけるオウンドメディアに焦点を当て、オウンドメディア強化の意味、競争力を高めるためのオウンドメディア戦略と実践ノウハウなどが紹介された。

基調講演

B2B企業のオウンドメディア戦略は
野心的な問題設定

セミナーの冒頭、首都大学東京大学院准教授の水越 康介氏が「トリプルメディア時代のコミュニケーション戦略」と題して、基調講演を行った。それによると、オウンドメディアが注目されるようになった背景には、2010年頃からのトリプルメディア・マーケティングの広がりがある。ソーシャルメディアの台頭を受けて、自社サイト、メーリングリスト、店舗、従業員などのオウンドメディア、ネット広告やテレビ広告、新聞広告などのペイドメディア、SNSやブログ、テレビ番組、新聞記事などのアーンドメディアの連携による顧客とのコミュニケーションが重要になっているという。

Photo:水越康介 首都大学東京大学院
社会科学研究科 経営学専攻 准教授水越 康介氏

「トリプルメディアは広告関係者の間ではよく話題に上っているようですが、新聞などでこの言葉を見かけることは、それほど多くありません。このことから、企業の現場ではまだ普及していないことが分かります。マーケティングの普及理論に沿って考えると、これは大きなチャンスです。最初に少数のイノベーターがいて、次にオピニオンリーダーが口コミで知らせ、普及期に入っていく。今、トリプルメディア・マーケティングに取り組むことは、イノベーターの役割を果たすことです」(水越氏)。


B2B企業では営業を支援するための
活用がポイント

水越氏は、トリプルメディアはそれぞれ代替的な存在ではなく、組み合わせて活用することが重要であると指摘。ただし、必ずしも3つを使うということではなく、それぞれの特徴を念頭に置いて活用することが大事だという。特に、ソーシャルメディアの運用はコストがかかるため、トリプルメディアに取り組む場合、組織での対応が望ましいと説く。

ブログやソーシャルメディアという新しいメディアが登場する中で、インターネットはすべてのメディアと親和性が高いため、メディアミックスを組み直す動きが出てきている。それに加え、最近では「自前メディアは力なり」と、B2C企業で自社サイトの機能を見直すケースも増加する傾向にある。

一般的に、トリプルメディアとの親和性が高い商品やサービスは、お酒、飲料、雑貨、自動車、旅行、ホテルなど、B2Cの分野だとされている。そこでのオウンドメディアを使う目的は、リサーチや新製品開発のための情報収集、販売・宣伝、エンゲージを高めるためのコミュニティ作りである。

それに対して組織購買が中心のB2Bでは、ブランディングよりも営業に軸足が置かれ、「自社サイトやソーシャルメディアを通じた営業支援、関与の高い顧客への情報提供、ネットワークやデータベースの構築など、長期的で継続的な関係づくりがポイントになる」と水越氏は総括した。

求められるカタログからの脱却と
メディアへの進化

水越氏に続き、トライベック・ストラテジー 取締役COOの後藤 洋氏が「企業競争力を高めるオウンドメディア戦略と実践ノウハウ」と題して、プレゼンテーションを行った。

Photo:後藤洋 トライベック・ストラテジー株式会社
取締役COO後藤 洋氏

後藤氏は「メディア環境の急速な変化の中で、企業にはトリプルメディア戦略の再考が求められている。その中で、オウンドメディアはユーザーに理解や共感、好感を持ってもらう信頼感のある場所として極めて重要」と述べた。

また、オウンドメディアを語る上で、重要なポイントとして「マルチデバイス」による顧客接点の広がり、「ソーシャルメディアインパクト」による購買行動の態度変容、そして「加速するメディア化」によるプレゼン力の強化の3つを指摘。マルチデバイスとソーシャルメディアインパクトの2つはよく知られているが、加速するメディア化はあまり議論されていないのが実情だという。

「今、オウンドメディアには、カタログから脱却し、メディアへ進化することが求められています。それはオリジナルコンテンツを活用して、営業担当者が顧客に向かってプレゼンテーションするように、サイトを作ることです」(後藤氏)。

自分たちのよさが顧客に伝っているか
どうかを軸に見直す

企業サイトのプレゼンテーション力アップには、3つのステップがあると後藤氏は言う。第1ステップでは問題点を正しく捉える。そのために、自社、ユーザー、競合他社の“3Cの視点”と、ユーザーニーズの把握、使いやすいサイト、企業ブランドや事業戦略の表現、競合他社との優劣点、差別化ポイント、PDCAサイクルによる運営の“6つの問いかけ”で、問題点を洗い出す。第2ステップでは、客観的な視点から課題を明確にし、問題点を取り組むべき課題に変換する。そして、第3ステップではカスタマージャーニー(シナリオ)を用いて、ユーザーの気持ちになり、コミュニケーションをデザインする必要がある。ユーザーの行動に見られる、初動、経験価値、アクション、共感という“4つの障壁”の乗り越え方をそれぞれ考えていくのである。実際、厚生労働省のサイトを手がけた後藤氏は、この3つのステップに従って改善に取り組み、プレゼンテーション力の向上に成功している。

その上で、オウンドメディアで成功するための3つの要素を紹介した。1つ目は、生活者にとって使いやすくて分かりやすく、記憶に残りやすいユニバーサルインターフェイスであること。2つ目はその企業の大事なオリジナルコンテンツを再活用するコンテンツキュレーション、3つ目は膨大なカタログ情報やクリエイティブを一括管理し、カタログ×メディアを目指すデータベースガバナンスである。「オウンメディア戦略のカギは、自分たちの会社のよさが顧客に伝わっているかどうかを見直すことと、今持っているコンテンツやリソースをどう生かしていくのかという点にあります」と後藤氏は述べて、プレゼンを終えた。

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登壇者プロフィール

  • 水越康介氏首都大学東京大学院
    社会科学研究科 経営学専攻 准教授水越 康介氏(プロフィール)

    神戸大学経営学部卒、2005年神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程終了 博士(商学)

    専攻マーケティング論、商業論、消費者行動論

    研究分野インターネットマーケティング、マーケティング戦略、マーケティング方法論

    著書・編著書・寄稿黒岩健一郎・水越康介著『マーケティングをつかむ』(2012年/有斐閣)、栗木契・水越康介・吉田満梨編著『マーケティング・リフレーミング 視点が変わると価値が生まれる』(2012年/有斐閣)、水越康介著『企業と市場と観察者 マーケティング方法論研究の新地平』(2011年/有斐閣)、水越康介著『Q&A マーケティングの基本50』(2010年/日本経済新聞出版社)

  • 後藤洋氏トライベック・ストラテジー株式会社
    取締役COO後藤 洋氏(プロフィール)

    慶應義塾大学法学部卒業。同大学卒業後、ソフトバンクに入社。同社出版部門の広告局にて、幅広いクライアントの広告営業に従事。また新規事業立ち上げにおけるマーケティング全般を担当。2002年4月より、トライベック・ストラテジーに参画。同社のユーザー視点でのワンストップソリューションを核に、IT、商社、医薬、飲料、金融、エンタテインメントなど業種業態にかたよらない幅広いプロジェクトに従事。専門はWebマーケティング戦略全般/コミュニケーション戦略/ROI・KPI策定/ブランドサイトならびにコミュニティサイトプランニングおよび構築など。

    著書「オウンドメディアコミュニケーション~成功の法則21~」

    連載ITmedia マーケティング「オウンドメディアコミュニケーション~成功の法則21~」

    参画内閣官房国家戦略室「国家戦略Webコミュニケーション検討チーム」

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