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スマホで話せば体調がわかる~音声病態分析が開く未来の医療

東京大学大学院医学系研究科 音声病態分析学 光吉俊二氏 徳野慎一氏

 光吉氏は数千ある感情を表す言葉を調査し、最終的に「喜び」「怒り」「悲しみ」「平静」の4つのグループに分類。それぞれを黄、赤、青、緑の色で表現し、直感的に感情を把握できるようにした。そして、約2800人に話してもらった約3万の発話をもとに、4つの感情を表す音声パターンのデータベースを作った。これは本人だけでなく、他人にも「喜んでいるように聞こえたか」「怒っているように聞こえたか」を判定させて客観性を持たせた。

「詐欺師」呼ばわりに発奮

 さらに、声帯の震えなどから「興奮」の度合いを測定する手法も開発。声に含まれる4つの感情の割合と興奮の度合いから、その人の感情をリアルタイムで表示、解析して判定するソフトを独自に開発した。解析した結果から、逆にその人の感情がどうだったかを検証する反証実験も800人に実施。「美大出身という経歴もあり、『詐欺師』呼ばわりされたこともあった。悔しさをバネにして信頼性に徹底してこだわった」

徳野 慎一氏(とくの しんいち)<br>

東京大学大学院医学系研究科 音声病態分析学 特任准教授、防衛医科大学校 防衛医学講座 非常勤講師。<br>

1988年防衛医科大学校卒。自衛隊中央病院勤務(心臓血管外科)、スウェーデン・カロリンスカ大学留学(大学院)、陸上自衛隊衛生学校 戦傷病救急医学教室 教官(戦傷病、災害医療)、陸上自衛隊第6師団司令部(医務官)、防衛医科大学校 防衛医学講座 准教授、陸上自衛隊 衛生学校 主任教官 兼 防衛医科大学校 防衛医学講座 講師などを経て2014年から現職。 徳野 慎一氏(とくの しんいち)
東京大学大学院医学系研究科 音声病態分析学 特任准教授、防衛医科大学校 防衛医学講座 非常勤講師。
1988年防衛医科大学校卒。自衛隊中央病院勤務(心臓血管外科)、スウェーデン・カロリンスカ大学留学(大学院)、陸上自衛隊衛生学校 戦傷病救急医学教室 教官(戦傷病、災害医療)、陸上自衛隊第6師団司令部(医務官)、防衛医科大学校 防衛医学講座 准教授、陸上自衛隊 衛生学校 主任教官 兼 防衛医科大学校 防衛医学講座 講師などを経て2014年から現職。

 音声で感情がわかるなら、ストレス状態やうつ病も診断できるのではないか。光吉氏が音声病態分析へと研究の重心を移し始めていた2010年、出会ったのが防衛医大に在籍していた徳野氏だ。徳野氏は災害医療が専門で、爆弾による人体への衝撃などを研究。2010年当時は自衛隊員らのストレスについて研究していた。

 ストレスなどを契機とする精神疾患は本人に自覚症状がなかったり、隠したがったりして症状が深刻化することが多い。このため、徳野氏は心理テストなどではなく、血液検査など客観的な指標で診断できないか模索していた。そんな時、光吉氏と出会う。「ストレスは声でわかりますよ」。さらりと言ってのける光吉氏に、最初は半信半疑だったが、実際に試してみると、そこそこ精度が高い。

 とはいえ、徳野氏が望むレベルには程遠かった。ストレス過多からうつ病への移行期間では、感情が表に出にくくなる。だから「悲しい」感情が多くなると、うつ病と推定はできるが、はっきりと断定はできないため、結局は医師が診断するしかない。ただ、「自衛隊内はもちろん、一般的にも精神科医の数は限られており、他の科の医師でも精神科での治療が必要と判断できるだけの精度がほしかった」。徳野氏は光吉氏に対し、「これじゃダメ」とさらなる精度向上を依頼する。

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