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購入金額だけで「顧客を格付け」する愚行

本当に大切にすべきは「熱狂する顧客」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

すべてが「売り手の発想」だった

 CRMに取り組んだ多くの企業で、「期待通りに成功した」と回答している企業は5%にも満たないという。なぜ多くの企業でCRMは失敗してしまったのだろうか。

 一般的に言われている失敗の要因は、組織の問題、ビジョンの問題、定着化の問題などだが、いずれの議論にも共通する不備がある。それは、最も重要な「顧客の感情に向き合っていなかった」という点である。

 CRMの軸となるRFM分析では、「1年前よりも1カ月前に買ってくれた顧客のほうがロイヤルティーが高いだろう」(Recency)と考える。同様に、「半年に1回買ってくれる顧客よりも3カ月に1回買ってくれる顧客のほうがロイヤルティーが高いだろう」(Frequency)、「年に1万円買ってくれる顧客よりも3万円買ってくれている顧客のほうがロイヤルティーが高いだろう」(Monetary)と考える。そして、ロイヤルティーの高さによって顧客に提示する割引率を変えようとか、ロイヤルティーの高い顧客には友だち紹介キャンペーンのチラシも封入しよう、といった販売促進策が導き出される。

 残念なことに、すべてが「売り手の発想」だ。顧客満足の向上やブランドとの良質な関係構築などと社内資料には書いてあっても、やっていることは「単なる売り込み」にすぎない。その打ち手によって顧客がどんな気持ちになるのか、ほとんど考えられていないのである。

購入金額=愛顧度という短絡的思考

 CRMが失敗したもう1つの理由は、「購入金額=満足度=愛顧度=友人・知人への推奨意向」と勘違いしていることだ。過去に購入金額が大きい人は、ブランドや店舗に満足し、愛してくれていて、友人や同僚にもブランドをすすめてくれる人であると思っている。

 しかし、そこには大いなる誤解が含まれている。あなたのブランドや店舗の売り上げは、2割の顧客によって8割がつくられている(いわゆるパレートの法則)。これは間違いないだろう。しかし、その2割の顧客(いわゆるヘビーユーザーやロイヤルカスタマーと呼ばれる顧客層)のうち、満足し、好きで、もしくは愛してくれていて、買い続けてくれている顧客は、ごく一部なのだという事実を知ってほしい。2割の顧客の多くは「ずっと使っているから習慣で」「替えることが面倒だから」「特に不満がないから」「職場や自宅から一番近いから」買ってくれているだけだろう。

 果たして彼らは、本当の意味でのロイヤルカスタマーなのだろうか。友人や同僚にすすめてくれるほどブランドや店舗を愛してくれている顧客なのだろうか。

 当然ながら、答えは「否」である。あなたのブランドや店舗を「特に不満がないから」「近いから」使ってくれている顧客が、あなたの商品を今後も買い続けてくれる保証はどこにもない。少しでも良いオファー(割引やプレゼントなど)があったり、もっと近くにお店ができたりすれば、簡単に競合他社に乗り換えてしまうだろう。

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