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購入金額だけで「顧客を格付け」する愚行

本当に大切にすべきは「熱狂する顧客」

トライバルメディアハウス 池田紀行氏

 もう内需の拡大は期待できない。誰かが獲れば、誰かが獲られるゼロサムゲームが始まっている――。

 日本の人口がピークに達しつつあった2000年代初頭(※)、「新しい商品をつくっても思うように売り上げが伸びない」、これから人口が減っていくのだから「新規顧客の獲得に頼っていると経営はジリ貧になる。既存顧客にもう1度買ってもらえるよう、売り方を変えなければ」という機運が高まった。

(※)日本の人口のピークは2008年の1億2808万人。2001年時点で1億2732万人だった。

 そして、多くの企業がCRM(顧客情報管理)の導入を進め、多額の投資をして大規模な顧客管理システムを構築した。CRMの目的は、「顧客満足度を向上させ、ブランドと顧客の良好な"関係性"を向上させていく」ことだった。購入金額や購入頻度をもとに顧客をランク付けし、優良顧客を優遇することによって「優良顧客の囲い込み」を目指していた。

 情報技術の進展もあり、時代は折しもデータベースマーケティングやリレーションシップマーケティングが花盛り。顧客を「個客」と呼び、「マーケットシェアから顧客シェアへ!」という大号令のもと、各社は「どうやったら個客に対して継続的・効率的に商品を買ってもらえるか」に腐心した。その結果が、個客の財布をパンパンに膨れ上がらせたポイントカードの乱発と、自宅の郵便受けをあふれ返らせている大量のダイレクトメール(DM)である。

大失敗に終わった「顧客との関係づくり」

 ここで皆さんに問いたい。

(問1)自宅に届くダイレクトメールに喜びを感じているだろうか。
(問2)ポイントカードを発行する店舗やブランドに、あなたはどこまで愛着を感じているだろうか。

 自宅に届くダイレクトメールについては、ほとんど「封すら切らず」にゴミ箱に直行しているものと想像する。喜びを感じることはまず無いだろう。ポイントカードについてはもう少しましな状況だろうが、愛着を感じている人はさほど多くないと思う。たいていはポイントが貯まるから(経済的にお得だから)ポイントカードを使っているのであって、ほかにもっとお得なオファーがあれば、何のためらいもなく競合他社に乗り換えてしまうのではないか。

 果たしてこれが「顧客満足度を向上させ、ブランドと顧客の良好な"関係性"を向上させていく」というCRMのビジョンだったのだろうか。「親展」という名の営業メールやポイントカードに、顧客は満足などしていない。「囲い込まれたい」とも思っていない。ブランドの魅力に感動するどころか、「うざい」とすら思われる。こんなやり方では、「このブランド、すごくいいよ」と友だちに紹介してくれることなど起こるはずはないし、本人の顧客生涯価値(LTV※)の向上すらままならない。現状のCRMは明らかに限界を迎え、閉塞感から抜け出せずにいる。

(※)Life Time Valueの略。その顧客から生涯にわたって得られる価値を指す。一般的には、年間LTVとして「過去1年間の購入金額」を指すことが多い。

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