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なぜか売れる 営業の超思考

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営業氷河期だからこそ、商売の基本は変えない

理央 周氏

 モノがあふれ、売れない時代と言われて久しくなりますが、最近、「ますます営業がしにくくなった」という声を多く耳にします。

 私は仕事柄、中小企業の経営者の方とお話しする機会が多いのですが、特に創業者の方がそう実感されているようです。これまでは、自分の人間関係で顧客から引き合いが来ていたのに、それがうまくいかなくなった。なぜそうなったのかがわからない、というのです。

 私がお会いする創業者の方々も、「自分はこのやり方で成功してきた」と、自分の仕事の手法に強固な自信を持たれている場合が多く、「もう少し柔軟に考えられないものか」と思うことがよくあります。

 時代の変化、マーケットの変化にともなって、顧客の購買態度も変わってきます。人間関係や営業センス、根性に頼った営業手法では通用しない時代になっているのです。

 ましてや、日本経済は成長期から成熟期に移行しているのです(口の悪い方は、「衰退期」と言ったりもしますが)。市場のパイが拡大している頃の売り方が、そのまま通用するとは考えないほうがいいでしょう。

 勃興期、成長期の経済では、いかに効率的に生産するかという、マスプロダクション(大量生産)の追求が中心になりますから、みんなが同じ商品を買います。この大量生産、大量消費の時代は、マス広告、押せ押せの営業が効果的だったりしたのです。

 ところが、成熟期の経済では、商品やサービスについても多様な選択肢が生まれ、さらに顧客の嗜好も人それぞれになるので、ユニークさが大切になっていきます。

 と、ここまではいかにも教科書的な説明をしてしまいました。

 しかし時代が移り変わったのだから、じゃあ営業という仕事の本質に対する見方も変えなくてはならないのか、となると話は少し違ってきます。

 もちろん、成熟した経済のもとでは、顧客にとっての選択肢も多様化しているわけですし、営業担当者が使える仕事上のツールも驚くほどの進化・変化を遂げていますから、表向きの仕事の進め方はだいぶ変わるはずです。

 けれども、本連載で強調している顧客にとっての価値という側面から考えると、商売の基本、本質はまったく変化していません。

 たとえば、音楽配信が広がってCDが売れなくなったからといって、音楽そのものを変えなくてはいけないのか、という議論と似ています。

 もちろん、新しい媒体、販売チャネルに乗りやすいようにするといった技術的な工夫は必要ですが、顧客の「いい音楽を聴きたい、面白い曲を試したい」というニーズそのものは変わっていません。

 レコードの時代、CDの時代にまったく見向きもされなかった曲が音楽配信の時代になったからといって、急に売れるようになるとは考えられないのです。

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