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なぜか売れる 営業の超思考

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買う気のない客の気が変わる、営業の「雑談力」

理央 周氏

 私は以前、ケーブルテレビ事業を手掛けるジュピターテレコム(J:COM)という会社に在籍していたことがあります。

 当時のケーブルテレビの営業というのは、一軒一軒訪問して、ケーブルテレビの加入契約を取ってくる仕事です。一般宅に飛び込みで行くので、営業の中でもハードな部類に入るのではないかと思います。

 私は多くの営業担当者に同行し、その仕事ぶりを見てきたのですが、なかなか契約の取れない営業担当者は、やり方がみなほぼ同じでした。

 まず、顧客宅を訪問すると、パンフレットを渡して、「ケーブルテレビ、いかがですか?」と言います。そう聞かれれば、答えは「イエス」か「ノー」かしかありません。ですから、ほとんどその場で「ノー」と言われてしまうのです。

 世の中では、国民みんなが使っているという化け物のようなごくごく一部の商品を除いて、ヒット商品と言われるものでも99パーセントの顧客には必要とされていないと考えておいたほうがいいでしょう。

 たとえば、書籍でミリオンセラー(100万部)というと、ものすごいヒット作のように思われますが、本を読むことができる日本人をざっくり1億人と仮定すれば、そのうちの1パーセントの読者しかお金を出しては買っていないわけです。

 その1パーセントの顧客にしか必要とされていないことを自覚し、その潜在顧客層にきちんとターゲットを定めてアプローチできるのがデキる営業です。

 さらに世の中には、数え切れないほどの「商品」があふれていますが、顧客にとって、世にある商品の99パーセントはいらないものと考えておけばいいでしょう。欲しいものは1パーセントくらいはありますが、顧客は自分がそれを欲しいと思っていることに、気づいていなかったりします。

 その顧客の心の中の1パーセントの潜在的需要を顕在化できるのが、デキる営業です。

顧客は、営業の話を聞くより、自分の話をしたい

 当時、J:COMでトップセールスだった営業マンは、顧客宅を訪問しても、ケーブルテレビの話をすぐには出しませんでした。

 まずは家の中の様子をさりげなく見回して、釣りの雑誌や釣り竿が並んでいるのを見つけると、「釣りがお好きなんですね」と趣味の話題を持ち出して、相手の様子を見ます。相手が会話に乗ってきたら、「ケーブルテレビには、24時間釣り番組を放送しているチャンネルがあるんですよ」と初めて商品の話を出すのです。

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