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加賀屋 笑顔で気働き

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女性が輝く2つの仕掛け~搬送ロボと保育園

加賀屋女将 小田真弓氏

 「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」で35年連続日本一を続ける石川県の老舗旅館・加賀屋。年間30万人が訪れる人気の秘訣はどこにあるのでしょうか。世界に誇るサービスはいかにして生まれたのでしょう。「いいえ」は言わない、マニュアルより笑顔で気働き――。「おもてなし」の真髄を育んできた女将の小田真弓氏が、自身の半生とともに振り返ります。

「ロボット革命実現会議」でスピーチ

 私は2014年9月、首相官邸で安倍晋三首相が出席された会議に、有識者として呼んでいただきました。タイトルは「ロボット革命実現会議」です。日本では少子高齢化が進み、労働力が不足することが危惧されています。その対策の一環として、ロボットのさらなる活用を探ろうと会議です。

 ご指名を受けて、2分間くらいスピーチをさせていただきました。なぜ私がその会議に呼ばれたか。それは、加賀屋が持つある装置にご注目をいただいたからです。2階にある調理場から、客室がある各フロアに配置されたパントリー(配膳室)まで料理を運ぶ「料理自動搬送システム」という機械です。この装置があることによって、客室係が料理を運ぶ手間を大幅に減らすことができました。結果として、お客様に接する時間が増えて、じっくりとおもてなしをすることができます。

 私たちはこのやり方を「ハイテックとハイタッチ」と呼んでいます。テクノロジー(技術)を使うことで、タッチ(お客様とのかかわり)を増やす、という意味です。旅館では、お客様との会話や、観光や交通機関のご案内といったサービスが欠かせません。じっくりとお客様とお話をする時間と余裕を確保するために、最新の技術を活用するという考え方です。

 ロボットや人の作業を減らすための装置というと、真っ先に思いつくのは自動車会社や機械メーカーの工場でしょう。最近は、接客を必要とするお店やホテルといった場所でも、取り入れているところが増えているようです。私たちは1970年代の半ばから、その必要性を感じて、新しい館を建てるたびに導入してきました。その当時のことを振り返りながら、加賀屋の取り組みをご紹介したいと思います。

 1981年(昭和56年)、12階建ての新館「能登渚亭」をオープンさせました。ターゲットを女性に据えて、数寄屋造りの建物でお茶やお花といった和風文化を愛する人にお越しいただこうという狙いを持っていました。建築デザイナーの山本勝昭さんにお願いして、ロビーの上部を吹き抜け構造にする斬新な建物のコンセプトが固まりました。

 立派な館はできましたが、もう一つ、解決すべき問題がありました。180室、約1000人収容の大きな旅館を作るわけですから、人手を確保しなければなりません。特に客室係は女性ですので、女性が働きやすい環境を整えないといけません。

 客室係の仕事で一番体力を使う仕事は、料理を運ぶことでした。調理場で重たい料理をワゴンに載せて、エレベーターで担当するフロアまで上がります。そして、フロアごとに配置しているパントリーでお客様ごとにおぼんに載せ替えて、部屋までお持ちします。加賀屋は一品ごとの料理の量も多いし、器も重たいものを使っていました。

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