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「自ら実験して物理法則を発見」した人工知能

マーティン・フォード 氏

アルゴリズムの最前線

 コンピュータテクノロジーをめぐる神話のなかで、いますぐゴミ箱に放り込んだほうがいいものがあるとしたら、コンピュータはプログラムされたとおりのことしかできないという誤った通念だ。

 機械学習のアルゴリズムは定期的にデータをかき回して調べ、統計的な関係を明らかにしたり、また本当に、自分が突き止めたことに基づいて自らプログラムを書いたりもできる。だが場合によっては、コンピュータがさらに進化を遂げ、これは人間の精神だけに残された領分だとほぼ誰もが考えるような領域にまで入り込むようになっている。機械が好奇心、創造性を示しはじめているのだ。

 2009年に、コーネル大学のクリエイティブ・マシン研究所所長のホッド・リプソンと、博士課程在籍のマイケル・シュミットは、基本的な自然法則を独自に発見できるシステムを作り上げた。

 リプソンとシュミットは、最初に2重の振り子を設置した。ひとつの振り子に、もうひとつ別の振り子を接着して吊り下げた仕掛けだ。両方の振り子が揺れだすと、その動きはきわめて複雑な、一見でたらめなもののように見える。

 次にセンサーとカメラを使って、振り子の動きを捉え、一連のデータを作り出した。そして最後に、ソフトウェアに振り子の最初の位置を制御する能力を与えた。いいかえるなら、自ら実験を行う能力を持った人工の科学者を作り出したのだ。

 彼らは何度も振り子を放すようにソフトウェアの制御を緩め、その結果生じる動きのデータをひたすら調べて、振り子の挙動を説明する方程式を導き出させるようにした。アルゴリズムはその実験を完全に制御していた。そのつど振り子をどこの位置で放すかを決め、しかもそれをランダムにはやらなかった。きちんと分析を行い、振り子の動きの根底にある法則について最も多く知見を与えてくれそうな特定のポイントを選び取っていた。

 リプソンはこう記している。このシステムは「ただじっと眺めているような消極的なアルゴリズムではない。自ら質問を発する好奇心を持っているのだ」。のちに〈ユリイカ〉と名付けられたこのプログラムは、ほんの数時間かけるだけで、振り子の動きを説明する多くの物理法則(ニュートンの第2法則も含めて)を導き出した。事前に情報を与えられずに、物理や運動の法則についてプログラミングもされずに、それをやってのけたのだ。

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