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サステナブルな経済社会の実現に向けた「三位一体の原則」

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エシカル消費~「おかげさま」の心が生み出す未来につながる消費

大和総研 調査本部 主席研究員 河口 真理子氏

なぜエシカル消費が大事なのか

 サステナブル経済の重要な担い手として前回はESG投資、前々回はCSRについて紹介した。それは、金融界、産業界自身が自分たちのビジネスを持続可能な方向にシフトしていくための試みであり、両者は車の両輪のような関係になる。それに加えて、現在の大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会をサステナブルな社会に変革するには、行政の存在も不可欠だ。しかし、この経済の循環をサステナブルにする主役であり責任もあるのは、実は消費者なのではないか。

大量生産・大量消費・大量廃棄の社会と消費者の責任 (出所)大和総研 (出所)大和総研

 私がこの消費者の重要性を認識したのは、2010年に組織の社会的責任に関する国際規格であるISO26000が発行された時である。このISO26000では、社会的責任を果たすべき7つの中核的課題――コミュニティ参画、人権、消費者課題、組織統治、労働慣行、公正な事業慣行、環境――を定めている。その後この7つの課題ごとに章を立てて、それぞれの活動内容を報告するCSR報告書が急増した。

 そこで違和感を持ったのは「消費者課題」の記述だ。その中身は消費者の声を活用してバリアフリーの使いやすいデザインにした、など単なる顧客満足(CS)の取り組みがほとんどだった。顧客ニーズをくみ取って製品サービスに生かすのはビジネスの基本だが、果たしてそれがCSRなのだろうか?

 ではCSRで求められる消費者課題とは何か?今回の連載で述べるように、現在の経済の主要なセクターである消費をサステナブルにしていく取り組みと考えるとおさまりが良い。筆者はそうした目で消費者教育や消費者行政、消費者のトレンドなどを調べているなかで「エシカル消費」に出会った。

 このエシカルとは英語のethical(倫理的、道徳的)をそのままカタカナに置き換えた言葉だ。日本で「エシカル」が聞かれるようになったのは2009年ごろからなので、ちょうど私が消費者問題を考え始めた頃になる。当時から日本でエシカル消費の実態調査を行っている株式会社デルフィスでは、エシカルを「人・社会や地球のことを考えた『倫理的に正しい』消費行動やライフスタイルを指します。エコだけでなく、フェアトレード(社会的・経済的に立場の弱い生産者に対し、公正な賃金や労働条件を保証した価格で商品を購入すること)や社会貢献等も含んだ考え方です(※1)」と定義している。

 これは、安くて良いものをたくさん欲しいという従来型の利己的な消費ではなく、気候変動問題や生物多様性問題、拡大する貧富の差が生み出す人権問題などのグローバルな課題にも目線を向けた、サステナブルな消費スタイルのことである。

(※1)(株)デルフィス「第2回エシカル実態調査」

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