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オサムイズム "小さな巨人"スズキの経営

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スズキの恐怖「VWによる敵対買収」

ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

 国内軽自動車トップのスズキは6年前、「次の30年の道筋」をつくるための一手として、独フォルクスワーゲン(VW)との包括提携に踏み切った。だが、「イコールパートナー」を掲げるスズキの思いに反して、VWの狙いはスズキの支配だった――。提携後すぐに生じた不信、対立、そして提携解消をめぐる係争の裏側に迫る。

 包括提携をめぐって両社が決裂し、VWがスズキに事実上の宣戦布告をするに至った経緯は、前回の『スズキと提携後、手のひらを返したVW』をご覧いただきたい。

痛恨の判断ミスと敵対買収の恐怖

<b>鈴木修会長</b> (撮影:佐々木孝憲) 鈴木修会長 (撮影:佐々木孝憲)

 スズキは、VWとの業務・資本提携の解消を翌日の12日に取締役会で決議し、包括契約の解除と保有するスズキ株式の売却を求めて、VWと交渉に入った。しかし、この交渉は難航し、結局11月に包括契約の解除とスズキ株式の返還要求を、VWに一方的に通知した。

「他社に影響を受けずに自主独立するのが私の経営哲学。それと相容れないとわかった。親戚付き合いはするが、依存するのは考えていない。VWはスズキを、支配しうる会社と位置づけた。全然話が違う。提携時の記者会見でも、VWにはスズキの経営哲学に同意してもらっていた。このままでは経営の足かせになる」

 立ちはだかるピエヒの支配主義との哲学のぶつかり合い。「ハート・ツー・ハート」の通じ合わない完全に異質な相手に対して、鈴木修は痛恨の経営判断ミスを犯してしまったのだ。

 ドイツ大手メディアのシュピーゲル誌(Der Spiegel)は、VWがスズキを敵対買収し子会社化する検討に入っているとの驚きの情報を発した。「敵対買収」。これは修と原山が、最も恐れてきたVWの強硬策であり、最悪のシナリオである。スズキの了承なしにほかの株主から株式を購入し、スズキの企業支配権を獲得する荒業だ。

 包括契約は、事業提携に関わる「本契約書」と出資関係構築にかかる補助的な「株契約書」の2層構造になっていた。株契約書のなかでは、スズキにはVWによる敵対買収の危険はなかった。スズキの了承なしにVWが株式を買い増し、勝手に売却することを禁じる「スタンドスティル条項」が含まれていたからだ。

 しかし、シュピーゲル誌の報道によれば、スズキは一方的に提携解消を申し入れており、株契約書が無効になる可能性がある。VWはスズキの了承なしに株を買い進められるということだ。このような行動が法的に有効かどうかはわからない。しかし、スズキが圧倒的な財務力を有するVWから敵対的に買収され、支配されるリスクを抱え込んだことに疑いはなかった。

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