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中東の実相に迫る

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深刻な失業問題が映す中東・北アフリカの課題

日本エネルギー経済研究所 中東研究センター研究員 堀拔 功二氏

 中東の動揺が収まらない。残虐なテロを繰り返す過激派「イスラーム国」(IS)の勢力は一時より衰えたとはいえ、戦闘はなお続く。イランの核開発問題やイスラエルとパレスチナの争いも出口が見えない。一方、人口が増え、経済成長が期待されるこの地域は日本企業にとって有望な市場でもある。混沌とした中東の現状をどうとらえ、付き合っていけばよいか、連載で考えていく。

若年層の拡大と雇用問題

 失業と雇用創出は、どこの国においても頭の痛い問題である。政府は適切な経済政策によって雇用を提供する責任があるだけではなく、必要な人材を供給するための長期的な教育政策や人材育成の結果も問われる。

 中東・北アフリカ(MENA)諸国においても、このような問題は長年にわたって指摘され続けているが、根本的な問題の解決には至っていない。それどころか、増加し続ける人口と若年層の拡大は、雇用の確保をますます重要で深刻な問題にしている。

 世界銀行の推計(2013年)によると、MENA全体の人口は2015年に約3億5,732万人であるが、2025年には約4億1,276万人、2035年には4億5,897万人と、20年で1億人近く人口が増える計算となる。

 2011年に中東全体を覆った「アラブの春」は、権力の不安定化を招き、社会経済的な悪影響を与えた。この時、若者らの主張の中心のひとつに失業問題があり、政治的自由と同様に適切な雇用を求める声が巻き起こった。実際、図1にみられるように、MENA諸国の失業率は他の地域と比べても高いことがわかる。同じく世界銀行の統計によると、2009年のGCC(湾岸協力会議)諸国を除く労働年齢人口は2.26億人であるのに対し、雇用者数は1.02億人であった。実に、労働年齢人口の55%が職に就いていない計算になる。

図1 中東・北アフリカ地域と世界主要地域における失業率(1980~2000年代)<br>

出典:Gatti et.al. Jobs for Shared Prosperity: Time for Acton in the Middle East and North Africa, The World Bank, p.96. 図1 中東・北アフリカ地域と世界主要地域における失業率(1980~2000年代)
出典:Gatti et.al. Jobs for Shared Prosperity: Time for Acton in the Middle East and North Africa, The World Bank, p.96.

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