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「社会貢献」から「企業価値そのもの」へ~ビジネスにおけるCSRの取り組み

大和総研 調査本部 主席研究員 河口 真理子氏

 前回、地球環境の危機的状況やグローバルな格差拡大による社会の不安定化といった社会の課題に対して、国際社会では、今年末に予定されているCOP21(国連の気候変動枠組み条約第21回締約国会議)などの気候変動対策や、この9月国連サミットで採択された持続可能な社会づくりのためのSDGs(持続可能な開発目標)などの枠組みが策定されていることを紹介した。しかしこうした枠組みを公的に整備したとしても、それを動かしていくのは経済活動の現場、つまり企業や金融に携わる人たちと私たち消費者にほかならない。そこで、2回目の今回はまず、ビジネスにおける取り組みについてみていきたい。

営利企業と社会課題解決

 営利目的の企業が、地球環境問題や人権保護などの社会的課題に取り組む理由は、主に二つある。

 一つは、その活動自体が収益を見込める事業の場合だ。例えば水処理や廃棄物処理、再生可能エネルギーや省エネ関連事業を手掛けるプラントメーカー、ゼネコン、機械メーカーなどは少なくない。また途上国の道路や橋などのインフラ整備、医療や衛生サービスの提供なども、重要なODA(政府開発援助)活動だが、これらを実際に手掛けているのは営利企業である。このように本業自体が社会課題解決に資する企業は少なくない。

 しかし、こうした事業に携わっていなければ、何もしなくてもいいのだろうか?水処理は処理会社に任せて自分の工場からは垂れ流して良いはずはない。また、製造業に比べ、自身が出す環境負荷は大きくない金融でも、融資先や投資先を通じて、大きな影響力を行使することができるはずだ。

 二つ目の動機は、そうした業種特性にかかわらずすべての企業を対象とした、企業の社会的責任(CSR;Corporate Social Responsibility)である。今回はこのCSRを切り口に、持続可能な社会づくりのために企業がこれまでどんな取り組みをしてきたのか、そして将来に向けて何をすべきなのか、考えていきたい。

CSRは社会貢献?

 CSRがどのように企業と社会的な課題を結びつけるのだろうか?筆者は20年近くCSRについて調査研究してきた。その間、京都議定書が生まれ、多くの企業にCSR担当部署が設置されてCSR報告書が作成されるようになり、この分野の専門家も多く生まれてきた。しかし一般社会においてはまだ、CSRに関して誤解している人が少なくない。すなわち、CSRは「良いこと」なので面と向かって反対できないし、やれるに越したことはないけど基本は余分なコストだから、「本業に迷惑かけない程度にやるか、やらなくて済むならやらなくても良い活動」というものである。

 こういう発言する人は基本的に寄付やボランティア活動などの社会貢献活動を念頭に置いているようだ。確かに社員による町の清掃活動や植林活動、NPOやボランティア団体への寄付や助成は、本業とは関係ない分野で行うことができるし、いずれも直接的な見返りを期待しない活動である。実際に90年代半ばごろまでは、社会貢献=CSRと捉えられてきた。

 しかしこの20年弱でCSRの実態は大きく変化し成長してきている。現在社会貢献活動はCSR活動の一部にしかすぎず、より本業との関連性が重視されるようになってきた。まさに社会課題解決の重要なツール、糸口とみなす企業が増えてきているのだ。

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