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「循環型経済モデル」がビジネスの新しい地平を切り拓く

『Waste to Wealth』の著者、ピーター・レーシー氏に聞く

 アクセンチュアで企業のサステナビリティ戦略や国の政策立案にかかわっているピーター・レーシー氏が、この9月に『Waste to Wealth』と題する著書を米国で発表した。「浪費から富へ」といった意味を持つこの著書で、レーシー氏は「サーキュラー・エコノミー」という概念に焦点を当てている。「サーキュラー(循環)」という言葉が意味するものと、それが「富」を生み出す仕組みについて、来日したレーシー氏に聞いた。

直線的モデルから循環型モデルへ

──9月に上梓された著書『Waste to Wealth』には「サーキュラー・エコノミーの優位性」という副題が付けられています。「サーキュラー・エコノミー」とはどのような考え方なのでしょうか。

<b>ピーター・レーシー(Peter Lacy)氏</b> アクセンチュア グローバル・マネジング・ディレクター<br /> 10年以上にわたって、サステナビリティ戦略や政策のコンサルティングに携わってきた。世界各地でサステナビリティをテーマとした講演を行っている他、企業や大学、欧州委員会、国連など、様々な機関のアドバイザリーボードのメンバーでもある。2007年、11年に国連とアクセンチュアが共同で行ったサステナビリティに関する合同調査のプロジェクトリーダーも務めている。 ピーター・レーシー(Peter Lacy)氏 アクセンチュア グローバル・マネジング・ディレクター
 10年以上にわたって、サステナビリティ戦略や政策のコンサルティングに携わってきた。世界各地でサステナビリティをテーマとした講演を行っている他、企業や大学、欧州委員会、国連など、様々な機関のアドバイザリーボードのメンバーでもある。2007年、11年に国連とアクセンチュアが共同で行ったサステナビリティに関する合同調査のプロジェクトリーダーも務めている。
 250年前の産業革命以来、経済はリニア(直線的)なバリューチェーンの中で営まれてきました。資源を使って製品を生み出し、それを消費し、廃棄するというモデルです。このリニアなモデルをサーキュラー(循環型)モデルに変えていく。つまり、役割を終えた製品や資源を回収し、再生させ、再利用するという循環をつくっていく。それがサーキュラー・エコノミーの基本的な考え方で、ここ数年、世界経済フォーラムなどで注目されるようになりました。

──従来のサステナビリティ、あるいはリサイクルといった考え方との違いはどこにあるのでしょうか。

 サーキュラー・エコノミーの概念における最も重要なポイントは、そのような循環をつくることが、企業にとってコストではなく、大きなビジネスチャンスにつながるというところにあります。私たちの試算では、従来の直線的な生産・消費モデルから脱し、循環型のモデルに転換することで、2030年までに世界中で4兆5000億ドルの経済価値を創出することが期待できます。

 ただし、この新しいモデルをつくるには、「ビジネスの成長には、資源の浪費が必要である」という考え方を根本的に改める必要があります。その旧来の考え方を支えてきたのは、「天然資源は無尽蔵に得られる」という前提であり、「資源価格は次第に安くなる」という法則でした。しかし、その前提や法則はすでに崩れています。

 この40年ほどの間の国内総生産(GDP)の成長率とエネルギーや原材料、食料などの価格の関係を見ると、1975年から2000年までは、確かにGDPが1%成長すると価格が0.5%下がるという法則が確認できます。しかし01年以降、この関係は逆転しました。GDPが1%増えるとエネルギーや原材料の価格は1.9%上昇するというのが、この十数年の間一貫して見られる傾向です。

──なぜ、逆転したのでしょうか。

 新興国経済が急激に発展したことで、エネルギーや原材料の需要が高まったからです。天然資源は枯渇に向かっている。しかし、資源の需要は増え続けている。価格が上がるのは当然です。世界の国々がこれまでのモデルで現在と同レベルの発展を続けていけば、30年には80億トンの資源が不足するとみられます。むろんその間、資源の価格は上昇を続けるでしょう。

──資源を浪費するモデルは、経済的に見ても合理性がないということですね。

 その通りです。もちろん、人類の活動の持続可能性という側面から見ても、資源の浪費が誤りであるのは明らかですが、私はまずは経済合理性という観点から資源浪費の見直しを訴えることが重要であると考えています。

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