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経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

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ケース12:ヤバイ情報は聞かなかったことにして乗り切れ!?

弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

今回の悩める経営者:河内かわち食品株式会社 取締役 仁柿にがき たかし(44歳)
相談内容

 先生、はじめまして、こんにちは。どうしても心配なことがあり、参りました。

 とはいえ、私が役員をやっている会社のこと、というより、私が取締役個人として抱えている悩み、と言った方が適切かもしれません。

 会社にも「保母潟(ほぼかた)」という、若手でやり手の、辣腕女性弁護士が顧問にいるのですが、内容が内容だけに、保母潟先生にも聞きづらく、友人のグラッフィックデザイナーの「イ左 里予(いささとよ)」ちゃんの紹介で、参りました。

 私、弊社、河内食品に勤務して、早21年。ずっと総務とか経理とか庶務とか営業促進部とか、日の当たらない裏方の分野で、「日陰野郎」「裏方野郎」「何、地味にこそこそ作ってんだ!」とか、営業とか企画とかの花形部署の連中から罵られながら頑張ってまいりました。

 しかしながら、一昨年、原産地偽装の問題が発覚した際、弊社創業家の佐村一族の謝罪文書の一切をゴーストライト、いえ、もとい、企画・起案・校正等を一切行い、危機を乗り切ったことが評価されました。

 その功績が認められ、今年の4月からは、ヒラではありますが、取締役に抜てきされました。

 河内食品も、まあ、関西ではソコソコの規模の会社ですから、親戚からも、「あの河内食品の役員さんになったの! すごい!」なんて言われて、鼻高々です。「ステータス」というものを、ようやく獲得できた、という感じですね。

 とはいえ、取締役会というものには初めて参加したところですし、昔は雲の上の方々だった重役のお歴々と同じテーブルに座るなんて、緊張しっぱなしです。

 私は、弊社で扱っている商品の味とか評判とかはわかるのですが、ドのつく文系で製品製造とか工場運営とかはからきしトンチンカンで、弊社商品がどうやって作られているのかとかは、全く知りません。

 それに、経理や総務や庶務の経験はあるものの、なぜか法務だけは経験がなく、弊社に関連する法律、会社法とか食品衛生法とかも、恥ずかしながら、一切、かじったことすらありません。ですので、取締役とはいえ、法律とかは全く門外漢です。

 そんな状態で、いきなり取締役会に出席するようになったのですが、よくわからない議論が取締役会でされており、途方に暮れているところなんです。

 で、その議論というのが、弊社で製造して、昨年、一時大好評を博した、
「レンジでチンして簡単に本格的な広島焼きが家庭で味わえる、新感覚の、冷凍食品!本格派広島焼き!『HIROSHIMA焼』」
というものがあったのを覚えておられるかもしませんが、この商品のことについてなんです。

 ご存知のとおり、現在では同業大手がはるかに優れた競合商品
「モダンを超えたモダン焼き!味のシュールリアリズムや!『ポストモダン焼き』」
が発売されるや、ボコボコに押しまくられ、市場から撤退。すでに販売終了しています。

 ところで、この「HIROSHIMA焼」、実は、コストダウンのために、中国で製造していて、材料もほとんど中国産なんです。そして、どうやら、その材料に、日本の食品衛生法では使用について未承認の添加物が、ほんの少しですが、使われていたようなんです。

 しかも、そういう、「未承認添加物が使われている」っていう情報が、偶然、ウチの出入り業者から伝えられた、ということで、すでにある程度の範囲で情報が出回っていることも考えられ、外部に漏れるリスクもないとは言い切れない、ということなんだそうです。

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