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「原価率300%」俺のイタリアンの謎

田中 靖浩氏

 近年、米国では、マーケティングや心理学を活用した値決め=プライシングの事例が多数登場しています。一方、かつてメード・イン・ジャパンのものづくりで勝利した日本は、いまだモノの品質にこだわり、それを「コストを下げて安く売る」ことばかり考えています。安値と決別するには自らの「価格の哲学」をもち、「顧客満足『高』価格」を目指す技術を手にしましょう。安値争いを繰り広げるDOG(デジタル・オンライン・グローバル)環境から、値下げの少ないCAT(コージー・アナログ・タッチ)な世界へ。この連載ではその道案内をします。

「半額」と「無料」にみるメッセージパワーの違い

 最近よくチラシや電車の広告などで「半額!」の文字を見かけます。そのたびに「大丈夫だろうか?」と心配してしまうのが私の悲しい性(さが)。

 数字的にいえば「半額」はかなり危険な行為です。なぜなら「半額」は、下げた分だけ儲けをまるまる減らしてしまうからです。その分だけ、たくさん売らないとカバーできません。しかし、いまや「半額」メッセージには、かつてのようなインパクトがありません。それならいっそ、効果絶大な「無料」のメッセージ・パワーを使うのはどうでしょう?

 「半額」で3個売るより、「3個買えば1個無料!」のほうがインパクトが強烈。しかも、「3個買えば1個無料!」のほうが儲けがはるかに大きいのです。

 たとえば、1個30円で仕入れて(変動費)、100円で売っている商品でシュミレーションしてみましょう(図表1)。「半額」の場合、「1個の儲け」が減って20円になり、3個分売った「全体の儲け」は計60円になります。

図表1 「無料」は「半額」より「全体の儲け」が大きい 図表1 「無料」は「半額」より「全体の儲け」が大きい

 では「3個買えば1個無料!」はどうでしょう? この場合、「1個の儲け」は70円のまま、これが3個分で計210円。そこから「無料」分の変動費1個30円が引かれ、結局、残った「全体の儲け」は180円です。

 この例でいえば、「半額」では60円の儲けに対し、「1個無料」の儲けは180円。なんと「無料」のほうが3倍も儲かるというわけです! メッセージ性の強い「無料!」のほうが、儲けも大きいことがわかります。

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