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2020年の「勝ち組」自動車メーカー

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日本車メーカー「擦り合わせ型」の弱点が露呈

ナカニシ自動車産業リサーチ 中西孝樹 氏

 欧州戦略に押され、日本車メーカーの世界的な競争力は相対的に低下している。ものづくりの力、垂直統合されたサプライヤー、そのサプライヤーが高度に関与する「擦り合わせ型」の開発モデルは、日本車メーカーの競争力の根本であった。日本車メーカーが有する「ものづくりの力」は今でも変わらぬ強みである。しかし、個別最適を優先する「擦り合わせ型」の開発モデルは、欧州の標準化戦略に対してコスト競争力が低下し始めている。

 東日本大震災、タイ洪水などの度重なる天災は、「ジャスト・イン・タイム」で部品を供給する生産システムの弱点もあぶり出してきた。わずか1個の部品の欠損で世界全体の生産活動に影響を及ぼすという課題を抱えたまま、規模拡大を持続させることは多大なリスクと認識された。部品の互換性を高め、規模と持続成長の両立を図ることが課題となったのである。

 国内サプライヤーの国際競争力が相対的に低下したことも、日本車メーカーの弱体化の原因の1つであろう。垂直統合された1次サプライヤーは、世界的な標準化、オープン化の流れから孤立しがちとなる。欧州メガ・サプライヤー、エレクトロニクスとITを武器とする新規参入プレーヤーに対し、1次サプライヤーの競争力は後退しているのだ。

米国偏重の反動

 米国市場で盤石な地位を築いたことが、日本車メーカーの最大の成功要因である。これは今後も変わらない強みとして維持すべきだが、2000年代の日本車メーカーは米国市場で楽勝し過ぎ、経営の軸が米国偏重となり過ぎた。そのつけが今、返ってきている。米国車メーカーの自滅、原油相場の高騰、円安バブル――。好環境の下、米国市場で日本車は売れ続けた。その中で、日本車メーカーは慢心し、必要な努力を怠った。

 それどころか、自身の実力を過大評価し過ぎ、大型車や高級車に傾倒する開発へ向かっていった。低燃費エンジンや低コスト部品の開発は後手を踏んだ。低コスト化を要する新興国ビジネスでも完全に出遅れ、主導権は欧米メーカーに奪われた。そこに、前回述べた「六重苦」が襲ったわけである。この結果、日本車メーカーの成功要因であった高品質と高価値はすっかり影を潜めてしまったのだ。

 ものづくりの力を今後も発展させていくことは当然だ。しかし、日本車メーカーは、謙虚に欧州戦略の標準化された設計概念を学び直す立場に立っている。その意味では、2020年目線で考えれば、欧州戦略へある程度は追随し、迎合路線をとらざるをえないのだ。

 ただし、単純に流れに迎合していくことは、囲い込みを狙う欧州戦略の罠に落ちるだけである。欧州戦略に学び、商品・開発・調達・生産のいずれの領域においても必要な構造転換を実施し、競争力の立て直しを早期に図らなければならない。その上で、日本車メーカー独自の強みを盛り込んだ戦略を2025年目線で打ち出していくことが大切である。

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